NPO法人再生医療推進センター

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送り火-秋の空

【無為駄言】今年の送り火も終わり,京都には秋の気配がただよっています。送り火は「盂蘭盆会」にちなんだ行事で,お盆の初日8月13日に各家庭の迎え火で迷わないように祖先の霊をあの世から自宅(現世)へ迎え,お盆の最終日8月16日に祖先の霊を再びあの世へ送るために「送り火」を焚きます。あの世とこの世の境目のような行事です。また,送り火を過ぎると京都も秋の気配がしてきますので夏と秋の境目でもあります。京都には,現世と他界の境(六道珍皇寺),自分と他人の縁の境目(安井金比羅宮,法雲寺),あの世とこの世の境目(一条戻橋)などのような境目に関わる伝承がいくつかあるように思います。

境目は再生医療分野の細胞にも有りそうです。最近,スイスのバーゼル大学の研究チームが「抗がん剤と糖尿病治療薬を組み合わせて、乳がん細胞を脂肪細胞に変えることに成功した」とCancer Cellに投稿し,Newsweekに報道されました。この研究チームは、がん細胞が体中に広がるときのメカニズムである上皮間葉転換(Epithelial-to-mesenchymal transition(EMT))や間葉上皮転換(mesenchymal-to-epithelial transition(MET))を活用し、既承認薬(抗がん剤「トラメチニブ」と2型糖尿病治療薬「ロシグリタゾン」)によって乳がん細胞を脂肪細胞に変えることに成功したと報告しています。EMTとは、周囲の細胞と接着する上皮細胞がその機能を失い、周囲と結合せず、運動性の高い「間葉」の形質を持つ細胞へと変化するプロセスを指し、METは、逆に間葉系細胞が運動性を失い、上皮細胞の形質を得る現象です。身近な例としては,皮膚に擦り傷や切り傷を負った時に、創傷部付近のケラチノサイトがEMT、上皮化やMETを引き起こして傷を治癒させます。実は,がん細胞も正常な細胞との境目にいることが伺えますね。再生医療に関わるES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)もがん化し易いことが知られています。中国科学院のグループによる「METの開始がマウス線維芽細胞からのiPS細胞樹立における核リプログラミングに必要」とする報告もあり,iPS細胞ががん細胞と正常に分化した細胞の境目に位置することが伺えます。近い将来,自由自在にiPS細胞から身体を構成する細胞へ分化させたり,色々な臓器を作ることができる時代が来ることを期待しています。(S)

(参考サイト)再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-