NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.72


専門分野: 脳・神経・脊髄

Q: 脊髄再生の可能性

 はじめまして、色々調べているうちにここにたどり着きました。2年前に、交通事故に遭い脊髄を損傷しました毎日がとても辛い日々です脊髄が再生、治療が出来る日は来るのでしょうか?自分みたいな人が何万人、毎日辛い日々を過ごしています。どうか宜しくお願いします。専門家の皆様から見た、脊髄再生の可能性やその他色々、ご意見を、お聞かせ下さいませんか?宜しくお願い致します。

掲載日: 2005.6.14

A:

 脊髄損傷に対する再生医療として、現在神経幹細胞の移植が考えられています。中枢神経を構成する細胞には、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトという3種類の細胞があります。神経幹細胞はこれら3つの細胞をつくりだすことができる(多分化能)未分化な神経細胞です。したがって、一度目的の組織から神経幹細胞を取り出すことができれば、体外で増殖させたのち移植することにより、ドナー不足の問題が解決しながら、効果的な神経の再生が可能になります。この神経幹細胞をどこに求めるかですが、考えられるのは
1. 患者自身の神経組織、
2. 患者自身の他の臓器、
3.胎児の神経組織、、の3つです。臨床応用を考えた場合、拒絶反応や倫理問題などから、1.と2.が理想的ですが、1.すなわち成体神経幹細胞の増殖能や増殖因子に対する反応性は、胎児由来の神経幹細胞に比べて低く、培養を繰り返していくとある特定の細胞にしか分化しないといわれています。また、2.の場合、ES細胞と同様100%目的の細胞に分化誘導することは不可能で、安全面で問題があります。したがって、3.の胎児由来の神経幹細胞が最も臨床応用に近い移植材料と考えられているようです。動物実験では、神経幹細胞の移植によって、神経幹細胞はニューロンへ分化し、ホスト側の脊髄との間に神経回路が形成され、運動機能の回復がみられたと報告されています。臨床応用化には、ヒトに近い動物での結果はもちろんのこと、神経の再生を阻害する物質(例:グリア瘢痕組織)への対策が必要ですが、いずれ脊髄損傷に対する再生医療が実現するものと確信しています。
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