NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.264


専門分野: 脳・神経・脊髄

Q: 全失語症の改善の可能性について

 脳神経の再生技術が、全失語症の改善の可能性をもたらすのか、教えていただけませんでしょうか?
わたしの家族は、脳腫瘍の病理検査中の医療ミスにより、右上下肢麻痺や知力の低下など、重度障害の後遺症が残りました。障害の中でも、最も悲しかったのが全失語症です。
検査の前日まで、マレットゴルフで飛び回っていた元気な状態であった本人とすれば、麻痺も知力も全失語症も、元に戻ることが願いだと思います。
家族は、本人は生きていてくれた事だけでも感謝しています。手足の代わりに、どこまでも付いていきます。知力が低下しても、笑ってくれるだけで家族は幸せです。でも、本人の悲しくて恐くてぶつけようのない気持ち、そんな思いを家族として何ひとつ聞いてやれない自分が情けないのです。本人の頭の中の言葉を代わりに理解して話をする事は、どうやってもできないのです。
言葉が通じない・理解できない世界で、本人が孤独・悲しみ・苛立ちを深めている日々の中、再生医療に全失語症がわずかでも改善する可能性が無いものかと、道を探しています。
再生医療とロボット工学との連携について、以前テレビで見た事があります。失語症改善に少しでも関係する再生技術がございましたら、どのような機関で研究されているのか国内外を問わず、どうか教えていただけませんでしょうか?
家族として自分にできることを少しでも探したいです、どうかよろしくお願い致します。

掲載日: 2006.6.15

A:

 専門家の先生方のご意見を参考にさせていただいて、回答を作成いたしました。
脳神経の再生に関しては、世界的に多くの施設で幅広く研究が進められていますが、まだ、大脳皮質のニューロンネットワークの再構築が出来るところには至っておりません。近い将来には可能になると思います。
全失語症についての改善を期待するには、現状ではリハビリテー ションによる治療がベストと思います。再生医療とロボットなどのお話しは、現時 点では運動に関しての改善をめざしたもので、失語症では困難と思います。リ ハビリテーションの施設で、言語療法士が失語のリハビリテーションに 積極的にとり組んでいるところがあると思いますので、そのような施設 をお調べいただいて、リハビリテーションをお受けになるのが、最もよろしいかと存じます。リハビリテーションによって、言語中枢の周辺の 脳が少しでも活性化されることを期待いたしましょう。
脳神経の再生に関しましては、今はまだ動物実験の段階ではありますが、大変希望が持てる状況になっています。胎児の脳細胞を用いる方法もありますが、日本においては、患者さんへの治療としては倫理上の観点から承認されていません。
倫理上許される範囲で、しかも安全に細胞(神経系幹細胞など)をどうやって大量に得られるかが患者さんに応用できるか否かのポイントです。多くの人が研究していますが、その方法が見つかるまでにはまだ、少し時間がかかるかもしれません。国をあげての研究支援体制の確立も必要です。画期的な研究成果が得られつつありますので、近い将来には夢の治療が実現する可能性がおおいにありますし、私達も、脳神経系に対する再生医療が一刻も早く実現することを切に祈っています。
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