NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.343


専門分野: 糖尿

Q: 1型糖尿病 再生医療の現在

 私の姪が、小学校の時に、1型糖尿病になり現在成人に成り、社会で貢献しております。先ほどNHKテレビにて、すばらしい再生医療の番組を見てぜひ、現在の先端医療の情報を教えて頂きたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

掲載日: 2008.6.6

A:

 1型糖尿病の再生医療につきましては、過去にいくつかのご相談にお答えしていますので参考にして下さい。今回は、最近の新しい治療法の状況について追加させていただきます。
今回のご相談のように、1型糖尿病にかかっていても社会で活躍しておられる方は珍しくありません。医者や研究者にもそのような方がおられます。ただ、罹病期間が長くなってくると、体内でインスリンがほとんど産生されなくなり、1日何回かのインスリン注射だけでは安定した血糖管理が難しくなる傾向があります。このような場合には、高血糖による合併症が進行したり、低血糖発作によって身体的あるいは社会生活上の問題が生じ、いわゆるQOL(quality of life:生活の質)が障害されます。移植ドナーが極端に少ない我が国では、このような重症糖尿病の患者さんが糖尿病に対する移植医療(膵臓移植あるいは膵島移植)の適応とされています。しかし、ドナー数が増加してくれば、もう少し早い段階で移植を受けていただけるようになるものと期待しています。
再生医療的な方法としては、膵臓でのベータ細胞の再生が期待できる薬剤が2型糖尿病の治療薬として登場してきました。ベータ細胞に対する自己免疫など、1型糖尿病の原因が治療できるようになれば、このような薬剤によって自己のベータ細胞再生も期待できるようになるかもしれません。
ES細胞やiPS細胞、あるいは膵臓に由来する培養細胞などからベータ細胞のような細胞(インスリンを産生し、血糖に反応してこれを適切に分泌する細胞)を分化誘導する研究もかなり進んでおり、最近では、動物実験で糖尿病治療に有効であったとの報告も増えてきています。ただし、臨床応用まではなお多くのハードルがあります。
ヒト以外の膵島(世界中でブタの膵島が研究されています)を治療に応用する研究では、食用の人造イクラを作るような方法を応用してブタの膵島を小さいカプセルの中に封入するミクロカプセル化膵島(免疫隔離機能があるバイオ人工膵の一種)が欧米を中心に研究されてきましたが、欧米のバイオベンチャー企業が主導して、これを腹腔内へ移植する臨床研究がロシアで開始されたとの情報があります。今後、有効性や安全性についての研究結果が明らかになれば、ブタ膵島の臨床応用が進む可能性があるものと注目されます。
このほか、血糖センサーやインスリン注入ポンプを用いた機械的な人工臓器としての人工膵臓についても改良が進み、これも外国のものですが臨床研究の成果が学術誌などに発表されてきています。
以上のように、1型糖尿病の新しい治療法は多くの方面で研究され、その一部はすでに欧米を中心に臨床試験の段階に到達しています。我が国でも同様の研究は行われていますが、残念ながら臨床研究までには至っていません。今後の課題としては、一定の評価が確立している膵島移植ですら高度医療としての実施を目指している段階であることを考えると、基礎研究もさることながら、このような先端的な研究成果を実際の治療に応用してゆく制度上の整備や、多額の費用をどうするかなど、社会的な理解と支援が非常に大切ではないかと思います。なお、このNPO再生医療推進センターもそのような再生医療の実現に少しでも役立てるよう、活動を続けております。
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