NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.353


専門分野: 眼

Q: 再生医療で色弱を治療できますか

 質問いたします。私は、色覚障害を抱えている者です。日常でも、色覚が異常であるが故に、世界史の資料集を見るのに一苦労したり、黒板でのチョークが見えにくかったりと苦労している日々です。
さて、私は色覚障害が将来的に治療できることを心から待ち望んでいます。今は無理でも、医学の信じられない進歩でできるようになるかもしれないと、本当に期待しています。
そんな中、最近「再生医療」というのがニュースによくでてくるようになり、無知な私でも「医療の画期的進化につながる」という程度のことは理解できるようになりました。
そこでお尋ねいたします。
再生医療の応用で、将来的に色覚障害を治療することは可能になるでしょうか?

掲載日: 2008.9.27

A:

 色覚障害に対する再生医療に対するお尋ねです。
多数の人が識別できる赤・緑・青の3色のうちの1色以上を識別できないことで生じる色覚障害は、それらの色を感じる網膜細胞が十分に機能しなくなるような遺伝子の変異が原因で起こります。味や匂いの感じ方にはかなりの個人差があるのですが、それと同じように、色の感じ方も人それぞれであると考えれば、色覚障害は病気というよりも遺伝的な個性として捉えるべき部分が大きいように思います。そういう立場から言えば、ご相談にあるようなご苦労は、いわゆるユニバーサルデザイン(どんな人にも公平に使えることなどを目指した製品や施設などのデザイン)の発展によって無くしてゆくべきものではないかとも思います。
さて、再生医療研究の状況ですが、実は再生医療の研究者の中に色覚障害の方が結構いらっしゃるのですが、現在のところ、色覚障害だけを目標にした再生医療の研究はあまり行われていないようです。ただし、失明に至るような網膜疾患を治療対象と想定した網膜の再生医療は盛んに研究されていますので、このような研究の延長線上で色覚障害の治療も検討されることになると思います。ただ、大分先の話だと思いますが、網膜を再生させる治療法ができた場合でも、ご自身の細胞には遺伝子変異があってそのままでは使えませんので、他人の細胞を使うことになります。そうすると、今まで感じなかった色を感じることができるようになりますが、そのことは、元々持っていたご自身の色の感じ方の個性が他人の感じ方に変わってしまうことになりそうです。このあたりのことは、移植や再生医療にまつわる根源的な倫理問題で、よく考えてみる必要があると思います。
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