NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.385


専門分野: その他

Q: 細胞外マトリックスでの傷痕治療

 細胞外マトリックスでの『魔法の粉で指再生』の質問記事をこちらで見ました。
掲載日2008年9月27日のものです。
爪までの再生には、爪母というものが関わって再生するので、切断箇所によっては爪までの再生が厳しいこと、魔法の粉の力でなんでも再生するわけではないことも解説でわかりました。
『指が切断⇒再生して元通り』になったのをみると、真皮の下の皮下脂肪組織まで損傷していてもこのような元通りになるのでしょうか?
指でも・・やはり皮下脂肪組織ってあるんですよね???
表皮・真皮・皮下脂肪組織まで傷が到達していても・・この細胞外マトリックスでの再生方法だと、傷痕は元の傷なしの状態に戻せると考えても間違いではないのでしょうか?
また、皮膚だけの損傷(骨などに異常がない、真皮や皮下組織までの損傷)だったら、この豚の膀胱から抽出したコラーゲンを主体とする細胞外マトリックスで、治せる可能性もあるのでしょうか?
顔に傷が残っているので・・・・規模の広大でない、切断した指の部分くらいの範囲の傷だったら治せる可能性もでてくるのかなぁと・・期待感がわいてきているのですが・・。

掲載日: 2009.8.21

A:

 「本当に骨や爪が生えてきたのか?」が大問題でしたが、今回は皮膚についてのご質問ですので、皮膚の再生医療について、一般の方向けに解説したいと思います。
皮膚は、表面から、表皮(角質を形成する上皮性の層で、この層自体には血管は入っていない)、真皮(線維や血管などからできたしっかりした層)と皮下組織(脂肪や血管などがゆるくまとまった層)の3層からできています。怪我などでこの皮膚が無くなった場合に、できるだけ元の状態に近く治す方法(これが皮膚の再生医療です)につて解説します。
皮膚の全層に欠損部ができた場合(今回は直径数cmの比較的大きなものを想定しています)、出血があって、そのままでは感染する恐れがありますから、普通の場合(腕や脚、腹や背中のように皮膚に余裕がある場合)は、周囲の皮膚を寄せて縫い合わせます。こうすると出血が止まり、感染も防止できて、1〜2週間で傷が癒合すれば治癒します。ただ、指の断端で縫い合わせるには骨を削って指を短くしなければならない場合や、顔などで、無理に引き寄せると口や鼻、目が変形する場合などは、無理に縫合すると問題が残ります。このような場合、従来は体の他の部分から皮膚を移植することが行われていたのですが、皮下組織を含むような厚い皮膚移植は困難です。そこで、時間をかけて組織の再生を期待する場合が、最近(特に再生医療の意識が高まった10年ほど前から)増えて来ました。このような場合、当面は止血用の材料などで止血をはかり、創部を清浄に保って組織の再生を期待することになりますが、通常のいわゆるウエットドレッシング(ラップ用のプラスチック膜などで創部を覆って湿潤に保つ方法)のみでは、皮下脂肪組織や真皮の再生は限定的で、創部が肉芽組織(傷が治る過程で形成される線維芽細胞や血管などでできた組織)で覆われ、その表面に周囲から表皮が再生してくる形で治癒します。この場合、肉芽組織全体が瘢痕になりますから、かなり広い瘢痕が残ることになります。そこで、コラーゲンなどを主成分とする細胞外マトリックス様の素材(いわゆる人工真皮)を創部に適応すると、周囲から線維芽細胞や血管などの組織が入り込みやすくなり、元の真皮に類似した組織ができやすくなります。ただ、このままでは表皮が周囲から再生するのを待つ時間がかかりますので、時期をみて表皮の自家移植あるいは自家培養表皮の移植を行う事で早期の治癒が期待できます。また、実験室内で人工真皮の素材に線維芽細胞などを生着させておき、その上に培養表皮を重ねた組織工学的な人工皮膚も研究開発されています。
ただ、以上のような方法で瘢痕が比較的少ない皮膚(表皮と真皮)が再生しても、皮下脂肪組織の再生はあまり期待できません。これについては、乳房再建などで試みられている脂肪組織の移植のような、また別のアプローチが必要と考えられます。
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