NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.602


専門分野:その他

アーレン症候群について

小さい頃は部屋では豆電球で本を読むぐらいでした。高校生になると教科書に青色透明の下敷きを置いて読んでいました。小さい頃から外ではツバ有り帽子を被っていましたが、20歳を過ぎるとサングラスが必須になりました。36歳頃までどんどん色が濃くなり、今は落ち着いています。近隣10軒以上の眼科と3つの大学病院へ行きましたがどこへ行っても「異常無し」で、半数の眼科医は「色付は眼が悪くなるから止めなさい」と。昨年、研究室でのスクリーニングで「アーレン症候群」と判明し半分は腑に落ちました。残りの半分は原因が分からないからです。色フィルターを通すため、錐体なのか、脳の処理なのか・・・。難病指定にもなっておらず、知らない眼科医の方が多いそうです。
シーンによって遮光眼鏡をいくつも作る必要があり、経済的にも負担が大きいのですが、現行の補装具は羞明の基準はありません。原因が錐体なら網膜再生、脳なら神経再生で、治療法が確立されると嬉しいですが、いかがでしょうか?よろしくお願い致します。


掲載日: 2017.08.13

A:

 アーレン症候群について知識が無かったので、ネットで調べました。自閉症なども含まれる発達障害の一種で、ある色の光に過剰に反応して色々な問題が生じ、特に、普通の状態では読書に困難が生じると理解しました。対症療法として、特定の色(人それぞれに異なる)が付いたフィルムを載せて読書をしたり、めがねをかけたりすることで症状がかなり緩和するようで、国内では筑波大学でこのような方法を実践されているとのことでした。
 さて、この状態に対する再生医療の可能性ですが、まず、原因が特定されていない現状では、残念ながらどこをどう治せばよいのかにわかには思い付きません。問題が網膜だけであれば、確かに網膜再生が可能となれば治療の可能性が出てくると思いますが、光や色の認知機能の問題となると、脳の情報処理の問題を解決する必要があるかもしれません。そうなると、単純に脳細胞を作り直せば済むということにはなりません。このような脳の機能は個人の尊厳と密接に関係していますので、脳を作り替えるということは、例え病気を治すためであっても、非常に大きな倫理的問題を含んでいると考える必要があります。
 このような再生させて作り替えるやり方とは違うアプローチとして、患者さんのiPS細胞をからその患者さんの病気で問題となる細胞や組織を分化誘導して試験管内で病気を再現し、この病気を軽減できる物質を探して薬にする、というやり方があります。この方法で様々な病気に対する薬が模索されており、先日も、「進行性骨化性繊維異形成症」という筋肉が骨に置き換わる難病に効く可能性がある薬が見つかり、これについて治験を開始するというニュースがありました。発達障害の中では自閉症に対してこのようなアプローチが試みられています。この場合、iPS細胞から分化誘導するのは脳の組織で、これを正常ないPS細胞から分化察せ他ものと比べることで、自閉症の原因となる変化を類推することが可能です。この変化が病気と密接に関連していることが確認できれば、この変化を抑える薬を発見すれば、治療薬となる可能性が出てくると言うわけです。アーレン症候群についても、同じようなアプローチで症状を抑える薬剤が開発できる可能性があるのではないかと考えます。
 iPS細胞の利用方法として、網膜色素上皮のように病気で悪くなる組織を作成して移植するという方法と、今回紹介したように、患者さんのiPS細胞を使って病気を試験管内で再現することによって新しい薬の発見に繋げるという方法があります。後者はヒトのからだに細胞を入れる訳ではないので、できた細胞の安全性に関連する問題が少なく、すでに世界中で盛んに行われています。


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