再生医療相談室

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No.782 低酸素脳症による小脳の萎縮

項 目

内 容

専門分野脳・神経・脊髄
質問タイトル低酸素脳症による小脳の萎縮
質問内容

私は4年半程前に心不全となり、入院しました2ヶ月程意識がなく人工呼吸器を付けておりました。その後何とか半年で退院出来ましたが、その後上手く体を動かせなくなってしまいました。筋力低下のせいか思いとリハビリを続けてきましたが、あまりにも治らないもので脳神経外科でMRIを撮っていただいたところ大脳は、特に問題無いみたいでしたが小脳の萎縮が見られるとの事でした。具体的に出来なくなってしまった事は、床からの立ち上がり、手すり無しでの階段昇降、後は自転車に乗ることです。このような状態ですが、再生医療で回復の見込みは有るのでしょうか?

掲載日2023年03月07日
回 答

低酸素脳症による小脳の萎縮のために立ち上がりなどができなくなっていると言うことですが、「再生医療で回復に見込みはあるか」と言うお尋ねと思います。

具体的に言いますと、再生医療で間葉系幹細胞の点滴を受けるか、間葉系幹細胞の培養上清を試してみられることで症状が軽くなるかもしれません。

間葉系幹細胞の点滴というのは、例えば腹部の脂肪を少量切り取って(局所麻酔の手術をします)、培養し(培養施設が必要です)、量が増えてから(一説によれば、一千倍以上になるそうです)、点滴します。これならば、自己由来の間葉系幹細胞が行えます。点滴された幹細胞は病変部分にhoming(点滴された幹細胞が病変部分に集まること)して、一部は小脳の細胞になるかもしれませんし、大部分の細胞は増殖因子を出して血流を上、小脳の再生を助けるかもしれません。三菱ケミカルグループは開発を中止しましたが、muse細胞は小脳の細胞になる率が高いと言われています(muse細胞の場合、製剤ですから、局所麻酔の手術は不要ですが、経過から言って投与は難しいかもしれません)。

培養上清の場合、細胞を点滴する訳ではありませんから、投与した幹細胞が小脳の細胞になる機序は起こりませんが、増殖因子などは多量に含まれているので効果がある可能性があります。また、exosome(エクソソーム)と言って、細胞から細胞へ直接情報を運ぶ微粒子が含まれていて、それが良いことをしているのかもしれません。いずれにしても、脳梗塞後の視野狭窄が広がる場合があると言われている培養上清が小脳に対して効果があるかもしれません。

自己の脂肪由来の間葉系幹細胞と培養上清を取り上げました。いずれも効果が有る可能性はありますが、効果が無い可能性もあって、試してみないと効果の程は分かりません。いずれの治療法も自費で、健康保険は効きませんし、脂肪由来の間葉系幹細胞は1度の点滴に200万円などと高いです。培養上清も数万円から(価格は医療機関によってまちまちです)の価格ですから、普通の点滴(健康保険が効く)から見ると、高価かもしれません。

いずれの治療法も自費ですし、効果・効能を謳うことは法律上禁じられておりますことを申し上げて終わりにします。