再生医療相談室

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No.788 蘇生後脳症の再生医療について

項 目

内 容

専門分野脳・神経・脊髄
質問タイトル蘇生後脳症の再生医療について
質問内容

妹が1年前に双子を妊娠・出産後に心筋症を発症し、その後蘇生後脳症で遷延性意識障害の状態です。自発呼吸はあり、開眼もありますが追視はありません。

なかなか有効な治療がなくもどかしい思いの中、再生医療が脳血管障害に有効であると知りました。

そこで、現在日本国内で蘇生後脳症で再生医療を受けられる病院はあるのでしょうか?まだ、日本国内では出来ませんか?27歳で遷延性意識障害となり、生まれた子どもたちと一緒に過ごせない妹に有効と言われる治療をどうしても受けさせたいと思います。

また、発症後1年経っていると再生医療の対象にならないことはありますか?

掲載日2023年05月09日
回 答

妹さんが1年前に双子を出産し、直後に心筋症を発症し、その後、蘇生後脳症にかかられたというご相談です。発症後1年経っているということですがどうか、というご相談です。

間葉系幹細胞による治療が、少なくとも動物実験レデルでは蘇生後脳症に効果があると言われています(Therapeutic benefits of human mesenchymal stem cells derived from bone marrow after global cerebral ischemia. Zheng W, Honmou O, Miyata K, et al. Brain Res. 2010 1310: 8-16.)。これは、札幌医科大学の本望先生によるもので、彼らは、その後、「ステラミック注」を開発して間葉系幹細胞の可能性を示しました。しかし、これは、骨髄液採取を実施することが可能な受傷後間もない脊髄損傷の患者を対象として、厚生労働省より条件および期限付き薬事承認を得ていますので、蘇生後脳症には使えません。

一方で、各地のクリニックなどで、患者の脂肪由来の間葉系幹細胞や、他人の歯由来の間葉系幹細胞が投与されています。これらがステラミック注と同じものでないことは論をまちませんが(原料が違いますから当然製品も異なります)、間葉系幹細胞であるという事実がありますので、同じように効果があるのかもしれません。また、間葉系幹細胞の分泌物が同じような作用を持つと言う話もあります(Molecular mechanisms responsible for therapeutic potential of mesenchymal stem cell-derived secretome. Herrell CR, Fellabaum C, Jovicic N, et al. Cell 2019, 8(5): 467)。分泌物を含む培養上清などが各地の医療施設で実際に使われています。ただし、保険は効きませんので自費になります。間葉系幹細胞であれば100万円台から、培養上清であれば数万円からと言うのが1回の値段かと思います。

と言うことで、間葉系幹細胞の話ですが、個人によって効果のほどは異なりますので、十分注意して使っていただきたいと思います(この文章は再生医療の使用を推奨するものではありません)。「1年経っていると再生医療の対象にならないことはありますか?」と言うご質問ですが、実際にやっている医者に聞いてみてください。医師の責任において使うものですから、実際に行う医者の判断によります。もちろん、お金を払うのは親族ですから、親族の判断も大事なのは言うまでもありません。