NPO法人再生医療推進センター

No.019 元気の出る再生医療

再生医療の夢

細胞には再生能力があります。

私たちの身体は様々な細胞からできていますが、元々はたった一つの受精卵という細胞です!それが二つに分かれた時、どちらの細胞も全ての細胞に分化することができます。発生初期に二つに分かれた時に一卵性双生児が生まれますよね。このお二人は元々たった一つの細胞から育たれるのですから、元になる遺伝子(DNA)は全く同じです。当たり前ですが、一人の身体は一つの細胞が分裂して出来るのですから、体中の全ての遺伝子(DNA)は同じですよね((注)分裂するごとに遺伝子配列が少しずつ変わることが知られていますので全く同じと言う訳ではありません)。

同じ遺伝子なのに、まるで違う細胞が出来るなんて、まさに神秘です。分裂を繰り返すにつれて、細胞に”個性”が現れてきます。皮膚の細胞は皮膚を、心臓の細胞は心臓を、肝臓の細胞は肝臓をつくるように、”分化”していきます。分化は個性であるとともに調和です。皮膚の細胞の隣には皮膚の細胞が、心臓の細胞の隣には心臓の細胞が綺麗に並びます。皮膚の細胞と心臓の細胞が入り乱れるなんてことはありませんよね。この調和を獲得する時に失われていくのが分化能です。一旦皮膚の細胞に分化した細胞はもう心臓の細胞にはなれません。

この常識を覆したのが、山中先生が発見され2012年にノーベル医学生理学賞の受賞対象となった人工多能性幹細胞アイ・ピー・エス細胞(iPS細胞)です。一旦皮膚になってしまった細胞をもう一度心臓の細胞にもなれる細胞に”初期化”されたのです。これは成熟過程で失われた分化能を取り戻した、いわば「やり直し」に成功したのですから、夢のような話です。実際に臓器や組織の再生(臓器移植、組織移植)にも道を開いています。分化能を取り返すことが出来るようになりました。

一つだけ注意しなければならないことがあるように思います。分化能を取り戻すと”調和”を失います。分化能に富んだ細胞をもしそのまま体内に投与したらある細胞は皮膚になり、ある細胞は心臓になり、ある細胞は骨になる、なんてことが起こり得ます。実際、iPS細胞と同様に強い分化能を持つ胚性幹細胞(ES細胞)をそのまま、動物に投与(移植)すると腫瘍(特に奇形腫(様々な組織が混じっている腫瘍))が出来てしまいます。遺伝子操作を行っていないES細胞で起こる現象ですから、がん遺伝子との関係は恐らくありません。“分化能”と引き換えに“調和”を欠いた為でしょう。

ですから、がん遺伝子を完全に制御できたとしても、iPS細胞から作成した組織・臓器の移植にあたっては、未分化の細胞が残っていないよう注意する必要があるかも知れません。

再生医療が大きく開花することを夢見て。

(neuron / 20230310)