NPO法人再生医療推進センター

元気の出る再生医療(第2回)


元気の出る再生医療(第2回)

リシャ神話にプロメテウスの話が出てきます。肝臓の再生能力を示唆させるような逸話です。イモリに見られるように、生物の“再生”は、古来不思議な現象であり、生命の起源にも関わる古くて新しいテーマでもあります。

“コラム”に記述されているように、再生医療には、自家移植、他家移植、異種移植があります。
異種移植に関しましては、前回のトピックスで、糖尿病患者さんへのブタ膵島細胞移植が厚生労働省から承認を受けた旨をお知らせいたしました。異種移植の臨床応用としては、これが我が国初めての実施承認となります。

再生医療は治療に用いる細胞の選択が重要な課題になります。有望な幹細胞として注目されている細胞には、ips細胞、骨髄間葉系幹細胞、脂肪間葉系幹細胞などがあります。
ips細胞は将来的な実用化を目指して幅広い分野で建設的な研究開発が進行しています。何よりも創薬開発面において画期的なブレークスルーをもたらし得るものと大きな注目を浴びています。臨床応用への実用化に関しましても、国民からの期待が大きく将来的な発展が大いに嘱望されます。しかしながら、その実用化に際してはクリアーされるべき課題も山積しており、慎重かつ堅実な進展に夢を寄せながら暖かく長い目でサポートしていく必要があります。

現状では、骨髄細胞や脂肪細胞などの幹細胞を利用する再生医療がすでにかなり以前より実用化して、世界的にも着実に拡がりを見せつつあります。骨髄細胞や脂肪細胞の間葉系幹細胞に関しましては、より現実的な側面から、今後の幅広い分野における臨床応用のさらなる発展に繋がっていくことでしょう。
さらにこれらの細胞に関しましては、長年に及ぶ臨床応用の効果・実績が積み重ねられていますので、これまでの集積を基にして、従来効果的な治療法の無かった種々の難病に対して、新たな再生医療の開発を目指す取り組みがなされつつあり、大きな期待が寄せられています。

骨髄間葉系幹細胞、脂肪間葉系幹細胞、ips細胞などは、それぞれが再生医療にとって重要な細胞であり、公平・客観的な科学的視野のもとで評価し、それぞれの細胞の特性を有効に活用しつつ、難病に苦しんでおられる患者さんに対する画期的な治療開発を目指していくことが大切ですし、この視野の広い姿勢を持つことが再生医療が社会に貢献し得る原点になります。

再生医療のABC「イモリは再生の夢を見るか?」

2.ヒトの再生はどこにたどり着くか?

極限の再生とは自分自身をもう一つ再生することと言えるでしょう。すなわち自分のクローン(*1)を作ることに行き着きます。映画の世界で時々見るような大きな培養器の中でヒトを作っている様なイメージです。少し異なりますが、クローンは動物のレベルで既に実現されていて様々な社会的問題を提起しました。現代ではES細胞や幹細胞からの再生技術の進歩もあり、ヒトを個体レベルで再生し、その臓器や組織を機能しなくなった自分の臓器と取り換えるような医療技術も空想の世界のものではなくなってきました。当然、この様な医療技術は社会的にも、倫理的にも、宗教的にも許されるものではないでしょう。

(*1)一個の細胞あるいは個体から無性生殖によって増えた細胞群あるいは個体群。全く同一の遺伝子を持つ。受精卵の分割や核の移植などによってクローン動物が作出されているが、倫理的・社会的な問題が指摘されている。(スーパー大辞林(3.0)(松村明編、三省堂)より)

それでは、再生(医療)はどの辺りを目指しているのでしょう?

そのお話の前に少し寄り道します。再生医療は細胞、組織、そして臓器を再生して治療に使うわけですから、移植医療とも言えます。細胞、組織、そして臓器を移植する移植医療は、移植するものの種類によって以下の様に分類できます。

  • 1)自家移植 自分の細胞、組織、そして臓器を移植
  • 2)他家移植 他人の細胞、組織、そして臓器を移植
  • 3)異種移植 人間以外の動物からの細胞、組織、そして臓器を移植

自家移植は、火傷した部位に健常な部位から採取した皮膚を移植するような場合に使われています。自分の骨髄や脂肪組織から採取した幹細胞を自分に移植する再生医療も自家移植ですね。他家移植は、いわゆる皆さんが想像する移植で他人の心臓や肝臓などの臓器(細胞や組織でも行われる)を移植することですね。異種移植ではヒトの強力な免疫機構による拒絶反応の問題がありますが、最近免疫隔離技術の発展でブタの膵ランゲルハンス島を免疫隔離容器に封じ込めてヒトに移植する医療が実現段階に達しつつあります。

それでは本題に戻りましょう。

現状、再生医療は一部のIPS細胞による再生医療を除いて、体性幹細胞を用いた再生医療が先行している状況です。骨髄からの幹細胞や脂肪組織からの幹細胞などで、パーキンソン病、脳梗塞、脊髄損傷、変形性膝関節症、アトピー性皮膚炎などを対象に試験的な再生医療の臨床試験が大学、研究機関、病院だけでなく、多くのベンチャー企業でも国内外にて実施されています。

自分の組織から採取した幹細胞で移植用の臓器を作ることは、まだ実用化レベルには達していませんが、3Dプリンターを応用した試みも行われています。最近、NHKのテレビ番組「モーガン・フリーマン 時空を超えて 死からよみがえることはできるのか?」で紹介されていましたが、この分野でミネソタ大学の生物工学者・ドリス・テーラー博士の研究アイデアは素晴らしいものがあります。テーラー博士は、臓器から細胞だけを取り除き、タンパク質だけで出来た臓器の外形にだけする技術を実現させています。そして、その臓器の外形に幹細胞を注入して臓器レベルの再生に成功しています。そして、実験室レベルでは再生した心臓に拍動することが確認されています。もちろん、心臓に疾患があって臓器移植が必要な患者さんの心臓を取り出すことは出来ませんが、理論的には人間の臓器の大きさに近いブタの心臓を取り出し、細胞を除き心臓の外形だけにして、患者さんから取り出した幹細胞を注入して、ブタの心臓の外形を利用した自分の心臓を再生して、自分自身の心臓移植に使う事が出来るようになるかもしれません。

最近、この「脱細胞化」技術を応用して国内でも東京大学医学部付属病院の廣田講師らが、マウスから取り出した子宮を脱細胞化して細胞周りの細胞外基質からなる骨格構造を有する「脱細胞化組織」を作成し、その組織片を別のマウスの損傷させた子宮に移植して再生することに成功した。これは、臓器そのものを再生するのではなく、細胞を除いた構造体を移植しても細胞が残存する場合は再生が可能であることを示したもので異なるアプローチの再生医療と言えるものです。また、将来的には不妊症の新しい治療へ応用されることが期待されます(http://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/press_archives/20160603-1.html)。

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