NPO法人再生医療推進センター

再生医療のABC「イモリは再生の夢を見るか?」


元気の出る再生医療(第4回)

 当NPO法人は、2001年に設立当初は再生医療の啓発、及び、その実用化促進を2つのテーマとしてボランティアー活動を継続してまいりました。現在では当初の予想をはるかに超えるスピードで再生医療関連のベンチャー企業も多数育成され、実に多くの関連企業が再生医療の研究開発に取り組むようになり、国策として政府から強力な後押が得られるようにまでなりました。
 2007年にはベンチャー企業が開発した再生医療製品が厚生労働省から初めて認可を受け、実用化されるに至っています。その後もいくつかの再生医療製品が厚生労働省から使用認可を得ています。
 今後再生医療の幅広い分野における実用化が進むことにより、再生医療の市場規模の急速・永続的な拡大が見込まれます。今回はこれまでに実用化に至った再生医療製品や、今後の医療費、市場規模に及ぼす影響等について簡単に概説いたします。

再生医療の最前線(2)「再生医療への期待、将来の事業規模、ベンチャー企業の動向」

1.はじめに

前報では、日本の将来に明るい希望を与え、日本再興の鍵の一つとなる再生医療について実用化の状況に関して、日本再興戦略での位置づけ、関連法律の整備と政策支援について、概要を述べました。本報では、再生医療への期待や将来の事業規模、同医療に関する新たな情報及び企業の活動についてご紹介します。

2.再生医療への期待

再生医療は、細胞培養、加工技術や分化・精製技術の進展により、ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)等(第1種再生医療)、あるいは脂肪組織や皮膚組織など生体の様々な組織に含まれている体性幹細胞等(第2種再生医療)、さらには体細胞の加工等(第3種再生医療)を用いることで、組織補充、組織再建の可能性が示されています。これによって、再生可能な組織・臓器の範囲を拡大することで、従来の治療法では根治が困難であった疾患や障害に対して、失われた機能を補修する治療が期待できます。
疾患研究をベースに、薬効評価や毒性評価の進歩により、創薬プロセスの効率化が期待されます。再生医療によって、長期的な治療が求められる状況から疾患の根治の道筋がつけば、医療費を軽減できる可能性があります。また、患者さんを治療に係わる時間的拘束から開放することで、社会復帰による経済効果も期待されます。図1は医療費の抑制が期待される疾患と現状の医療費を示しています1)。


株式会社シード・プランニング:平成24 年度中小企業支援調査(再生医療に対する実用化・産業化に対する調査事務等)報告書(平成25年2月)より引用し、作成

再生医療の将来の市場規模の見通しは、今後の再生医療の発展を展望する助けとなります。幅広い疾患に対して再生医療が実施され、ES細胞、iPS細胞等の多能性幹細胞や体性幹細胞の活用を含めた将来的な市場や、糖尿病を始めとする慢性疾患を中心とした医療費の削減等、再生医療の経済効果が期待されます。政策支援による研究開発予算の増額によって基礎研究が進展し、再生医療関連法や環境の整備により、再生医療の実用化が促進することで市場規模の拡大が予測されます。図2の将来市場予測によりますと、2012年で、国内の再生医療の市場規模は、90億円ですが、2030年には約1兆円、2050年には2.5兆円です1)。


図2 国内の再生医療の将来市場予測

(株式会社シード・プランニング:平成24 年度中小企業支援調査(再生医療に対する実用化・産業化に対する調査事務)報告書(平成25年2月)より引用し、作成)

3.再生医療に関する新たな情報

1)再生医療等治療賠償補償制度を再生医療学会と三井住友海上が11月に創設と発表(2016年7月21日)2)、3)
一般社団法人日本再生医療学会(澤芳樹理事長、以下「再生医療学会」)は、治療として行われる再生医療等における再生医療等を受ける患者および再生医療等に用いる細胞を提供するドナーの双方の健康被害救済ならびに再生医療等安全性確保法(2014年11月25日施行)の確実な遵守を目的として、「再生医療等治療賠償補償制度」(以下「新制度」)を11月1日に創設することを発表しました。これに伴い「再生医療等の治療における健康被害補償に関する手引きを定め、三井住友海上火災保険株式会社(原典之社長、以下「三井住友海上」)を幹事会社とするとのことです。
新制度では、従来の医師賠償責任保険で補償対象としている医師・医療機関に法律上の賠償責任がある場合の健康被害に対する補償に加えて、医師・医療機関に法律上の賠償責任がない場合も補償対象としています。また、再生医療等安全性確保法で義務化されているドナーに対する補償のみならず、同法では定めのない患者に対する補償にも対応していきます。
再生医療学会と三井住友海上は、新制度の創設とその運営を通じて、がん免疫細胞療法や歯科PRP療法をはじめとする再生医療等技術のさらなる健全な発展と、我が国における再生医療の迅速かつ安全な普及促進に貢献していくとしています。

4.再生医療を支える企業の現状

再生医療ビジネスに革新を生み出す企業、大学、研究機関および関連する行政機関などの動向についてご紹介していく予定です。本報では、実用化、承認された再生医療製品を開発された企業についてご紹介します。
再生医療製品で実用化された製品は、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社の自家培養表皮「ジェイス」と自家培養軟骨「ジャック」のみでした。同社の2製品は、いずれも患者さん本人の細胞(自家細胞)を用います。前記しました法整備によって、2015年9月に、テルモ社の重症心不全を対象としたヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」と、JCRファーマ社のヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)「テムセルHS注」の2品目が承認されました。

(1) 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング4) 

  同社は、再生医療等製品及び関連製品の研究開発、製造、販売を主要な事業目的として、医薬品医療機器等法の適用を受ける再生医療製品事業と、医薬品医療機器等法の適用を受けない研究開発支援事業を展開している企業です。再生医療製品事業では自家培養技術を利用した再生医療等製品を開発し、開発製品を医療機関向けに医療目的で製造販売しています。研究開発支援事業では、医療用培養表皮や培養軟骨の開発で蓄積した高度な培養技術を応用して、研究用ヒト培養組織を開発し、販売しています。

同社は2007年10月29日に厚生労働省より、日本初のヒト細胞・組織利用医療機器として自家培養表皮(販売名:ジェイス)の製造承認を取得しました。患者自身の皮膚組織を採取し、分離した表皮細胞を培養し、シート状に形成して患者自身に使用する「自家培養表皮」で、同品は再構築された真皮に移植され、生着し上皮化することにより創を閉鎖するとされています。

さらに、同社は、2012年7月27日付にて厚生労働省より、整形外科領域におけるヒト由来細胞・組織加工医療機器として日本初の自家培養軟骨(販売名:ジャック)の製造販売承認を取得しました。同品は、患者から採取した健常な軟骨組織より分離した軟骨細胞を、アテロコラーゲンゲルに包埋して培養し、患者自身に適用する自家培養軟骨です。

軟骨細胞を含むアテロコラーゲンゲルを欠損部に移植することにより、臨床症状を緩和するとされています。膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状が緩和するとされています。同社の自家培養軟骨「ジャック」が2013年3月13日に、保険薬価収載が決定し、保険適用されています。

(2)JCRファーマ株式会社5)

同社は医薬品、再生医療等製品およびその原料の製造、売買ならびに輸出入医療用機器および実験用機器の売買ならびに輸出入を行っています。同社は、健康な成人の骨髄液よりヒト間葉系細胞(MSC)を分離拡大培養し、その細胞自体が有する能力を利用して疾病を治療する製品「テムセルHS注」を2015年9月に日本初の他家由来の再生医療等製品として製造販売承認を取得し、2016年2月から発売しました。

造血幹細胞移植後に発症する重篤な合併症である急性移植片対宿主病(急性GVHDの治療製品です。他家細胞であるにもかかわらずMSC自体の免疫原性が弱いため、通常の医薬品と同様に、必要とされる患者さんに広く投与できるという利点があるとされています。

(3)テルモ株式会社6)

同社は医療の安全性や効率性の向上や、患者さんの身体の負担や痛みの軽減に寄与する製品やシステムを開発・提供しています。同社は足の筋肉の細胞で作った、直径4cmの薄いシート5枚を直接心臓に張り付けることにより、重症心不全の患者の心機能が改善されことを実証しました。同社が開発した心不全治療用の「ハートシート」は再生医療製品が保険適用の承認を受けました(2015年11月18日)。ハートシートによる治療の対象となる患者は国内に数万人とされています。治療が行えるのは、心臓移植や人工心臓の手術ができて細胞培養施設のある、数十の病院です。まずは数施設で年間30〜40人の治療を見込んでいます。2014年11月に再生医療の普及を目的に医薬品医療機器法が施行されましたが、同法のもとで中央社会保険医療協議会が初めて再生医療製品の価格を決めました。決まった公定価格は標準治療で1400万円前後と高額ですが、保険適用となったため患者負担は最大でも数十万円で済むとのことです。最先端の再生医療の普及が進みそうです。

6.結びに

次回は、再生医療事業の周辺の事業規模、再生医療の最新の動き、関連企業の活動をご紹介する予定です。

参考文献および参考資料

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