当センターのホームページ(再生医療トッピクスNo.09)でご紹介しました「脊髄損傷を患者さんの幹細胞で治療、年内にも承認、製品化へ」の続報です。
札幌医科大学は、ニプロ株式会社と共同開発を進めている「脊髄損傷の治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞a)」について、2018年12月28日、厚生労働省から「条件及び期限付承認b)」を取得したと発表しました1)-3)。
脊髄損傷の患者さんからの骨髄幹細胞(自己骨髄幹細胞)を用い初の細胞製剤(再生医療製品c))が12月28日、厚生労働大臣から7年間の条件付きで製造販売の承認を受けました。細胞製剤を共同開発した札幌医科大の本望修教授らとニプロ(株)が28日に会見し1)-2)、早ければ2019年度から当該細胞製剤を使って札幌医科大学で治療を始めることを公表しました。脊髄損傷は国内では年間5千人が新たになり、患者さん10万人いるとされています4)。
自己骨髄間葉系幹細胞(治験薬識別:コードSTR01、販売名:ステミラック注)は、札幌医科大学附属病院において、医学部附属フロンティア医学研究所神経再生医療学部門本望修教授と医学部整形外科学講座山下敏彦教授を中心とする研究チームが、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)橋渡し研究加速ネットワークプログラムの支援を受け、2013年12月より脊髄損傷の患者さんを対象とした医師主導治験を実施し、2017年2月に治験を終了し、同大学と共同開発を進めるニプロ(株)が2018年6月に「再生医療等製品」として製造販売承認申請を行っていました。
承認された細胞製剤は、患者さんから採取した骨髄液から骨髄幹細胞を分離し、培養して細胞製剤にした後に、点滴で患者さんに体に供給します。細胞が脊髄の損傷部に自然に集まり神経の働きの回復を促すということです。
2018年度内にも薬価が決まる見通しとのことで、細胞製剤として販売が可能となります。現状では細胞製剤の供給体制が限定されるため、当面は札幌医科大学で、脊髄損傷から数週間ほどの患者さんを対象に治療を実施する予定です。年間100例ほどを見込んでいます。加えて、慢性期の患者さんへの治験も近々始められるようです。
実施された治験の結果では、患者さん13人中12人で麻痺の改善が確認されたそうです。しかし、骨髄幹細胞の作用の詳しい仕組みは解明されておらず、これから7年間の間に、細胞製剤で治療された患者さんと、同製剤を用いずにリハビリテーションだけを行われた患者さんを比較し、有効性と安全性を継続して確認していくことになります。
本望教授は「一日でも早く、一人でも多くの患者さんを救えるよう頑張りたい」と話されました。
(参考資料)
(注釈)
(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)