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再生医療用語集
No.21 再生医療トッピクス
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ES細胞 臨床研究の動き
乳児の重症肝臓病に移植の臨床研究
1.はじめに

我が国では2001年の国の指針でES細胞の使用を基礎研究に限定しましたが、2014年に国は指針を改め、治療を目的とした研究利用が可能になりました。京都大学は2018年5月に、再生医療に使う人のES細胞を企業や大学などに配布すると発表しました1)。国立成育医療研究センターもヒトES細胞樹立機関として認定を受けました。ES細胞の治療研究も国内で進めば、体性幹細胞、iPS細胞と高めあうことで再生医療の進展に弾みがつきます。


2.ES細胞(Embryonic Stem cell:胚性幹細胞)について

iPS細胞に先立ち作製されたのが、胚(胎児と呼ばれる前の細胞の集合体で、受精卵が6-7回分裂して100個ほどの細胞の塊となったものが胚盤胞、この胚盤胞の内部細胞塊の細胞を取出して、培養した細胞がES細胞)から取出して培養したのがES細胞です。胎盤にはなれませんが、神経細胞、血球、心筋など体のあらゆる細胞になる多能性を有しています。1981年に英国の生物科学者マーティン・エバンス氏らは、マウスの胚盤胞の内側にある細胞を取出し、それを試験管の中で培養する条件を突き止めました。1998年に米国のジェームズ・トムソン(iPS細胞の作製を中山伸弥教授と同日に発表)氏がヒトのES細胞を作製することに成功しました。

ヒトES細胞は移植する細胞や組織の供給源となり得るため、再生医療の切り札とされてきました。しかし、ES細胞の実用化にあたり、倫理問題と拒絶反応の問題が壁として立ちはだかります。この拒絶反応を克服するのがヒトクローンES細胞です。2013年、米国のミタリポフの研究チームは体細胞ヒトクローンES細胞の作製に成功しました(ただこのES細胞を再生医療に応用するまでには、必要な組織や臓器へと変化させる方法が未開発であるという問題と、生命倫理の問題があります)。

ヒトES細胞の登場から21年、我が国おいて臨床試験が行われるようになりそうです。


3.乳幼児の重い肝臓病 ES細胞 肝臓細胞 臨床試験

(実施施設)国立成育医療研究センター

国立成育医療研究センターは、ES細胞から作製した肝細胞を、生まれつき重い肝臓病のある乳幼児に移植する医師主導の臨床試験(治験)を国に申請し、承認されました2)-4)。ES細胞を使った国内での人を対象にした臨床研究は初めてであり、世界的にも肝臓への移植は初めてです。肝臓の再生医療製品の開発につなげる方針です。

臨床試験の対象は、肝臓の酵素が欠けていて、有毒なアンモニアを生まれつき分解できない尿素サイクル異常症の乳幼児です。血中のアンモニア濃度が上がりますと脳に障害がでる恐れがあります。10万人に1人ほどが発症し、死亡率も高いです。治療には肝臓移植が必要ですが、安全面から生後3~6カ月以上でないと移植が難しいです。

計画によりますと、2019年までに数人の乳幼児に、ES細胞から作製した正常な肝細胞(数千万個)を乳児の血管を、肝臓につながるおなかの血管に注入します。この肝細胞がアンモニアを分解します。体調が安定した後に肝臓移植を行います。この時に摘出した肝臓を調べ、移植した肝細胞が定着して機能したか検証します。

同センターは年間約50~60例の(生体)肝移植を実施しており、わが国で実施されている小児生体肝移植の約7割を担い、生存率は世界トップです4)


4.あとがき

京都大学iPS細胞研究所の深田秋津講師らのチームが、ゲノム編集の技術を使い拒絶反応のリスクが少ないiPS細胞を作製する方法を開発したと2019年3月8日に発表しました5)。同チームはゲノム編集で、免疫細胞の「キラーT細胞」が、攻撃対象かどうかを見分ける目印となる免疫の型(HLA型)を破壊し、加えて、別の免疫細胞「NK細胞」が攻撃をやめる目印となるHLAの一部だけを残すようにしました。

この開発手法に基づき改変できたiPS細胞を取り出し、血液の細胞に変化させ、試験管内やマウスで実験した結果、キラーT細胞とNK細胞の攻撃を逃れ、拒絶反応のリスクが少なくなっていることを確認できたと発表しました。この開発技術を活かせば、今後、多くの人に適合するiPS細胞を今までよりも、容易に備えることが期待できます。


(参考資料)

  1. 日本経済新聞:医療にES細胞 ようやく日本で 政府から了承 京大が作製へ 臨床応用、先行する海外勢、2017年8月11日
  2. yomiDr.:ES細胞で初治験申請、肝疾患乳児に移植…国立成育医療研究センター、2018年3月23日
  3. 朝日新聞:ES細胞からの肝細胞移植、秋に第1号の治験開始へ、2018年5月1日
  4. 国立育成医療研究センター:役割と課題(概要版)、第2回国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会、2018年5月9日
  5. 朝日新聞:iPS、拒絶反応少なく ゲノム編集、京都大開発、2019年3月8日

(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)


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