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再生医療用語集
No.36 再生医療トッピクス

脳梗塞に対する再生医療等の取組(3)
厚生労働省に届出された「再生医療等提供計画一覧」から引用

再生医療は、今まで有効な治療法がなかった疾患の治療ができる可能性が高いですが、安全性などを確保して提供される必要があります。そこで、2014年11月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と共に、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行されました。再生医療等の安全性の確保に関する手続きや細胞培養加工の外部委託の規則等が規定されました。再生医療等を提供する医療機関等は、その提供計画を認定再生医療等委員会の審査で受けた後に、厚生労働大臣に届出ることが義務化されています。


その後、2017年 11月再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正し、再生医療等提供機関が提供する再生医療等に係る、①再生医療等提供機関の名称及び住所並びに管理者の氏名、②提供する再生医療等及び再生医療等の区分、③再生医療等提供計画に記載された認定再生医療等委員会の名称、④再生医療等を受ける患者さん等に対する説明文書及び同意文書の様式などが公開され、インターネットによって確認できるようになりました。当該説明文書には、再生医療等の内容、その効果と危険性、同意書、健康被害に対する補償、個人情報の保護及び費用などについて記載されています。


ここでは、上記の厚生労働省の「届出された再生医療等提供計画の一覧1)(再生医療等提供計画を国に届出した医療機関(再生医療等提供機関)の一覧)」から脳梗塞などに関連する研究及び治療を抜粋して紹介致します。いずれも第二種再生医療等・研究および治療からの引用です。「届出された再生医療等提供計画の一覧」の但し書きには「再生医療等を受けようとする場合は、同意説明文書をよく読み、医師からの十分な説明を受け、理解・納得した上で検討してください。」と記されています。


1.第二種再生医療等・研究に関する提供計画

脳梗塞に関連した研究・治療で届出されている提供計画は、いずれも第二種再生医療等の範疇です。第二種再生医療等では、研究に関して、64件の届出がありますが、脳梗塞等に関連した届出は2件です(2019年6月16日現在)。なお、以下の解説文の表現等は、再生医療等提供機関の原文を参考にしています。


1.1 急性期脳梗塞患者に対する自家脂肪幹細胞を用いた治療における安全性および効果の検討、急性期脳内出血患者に対する自家脂肪幹細胞を用いた治療における安全性および効果の検討

◎会津中央病院(会津若松市鶴賀町1番1号)

同臨床研究は、会津中央病院脳神経外科と、福島県立医大神経内科学教室、及び福島県立医大脳神経外科との共同研究で、患者さんに対して最新の診断並びに治療を提供するとともに、さらに効果の優れた治療法の開発を試みているとしています1)。この細胞移植治療臨床研究の目的は、自家脂肪幹細胞を移植し、麻痺している手足の機能が改善するかを検証し、日常生活が改善するかを検討することとしています。


1.2 脳梗塞に対する自家骨髄由来間葉系幹細胞を用いた臨床研究

◎医療法人伯鳳会はくほう会セントラル病院(兵庫県尼崎市東園田町4丁目23-1)

同病院では、脳梗塞に対する再生医療として骨髄由来間葉系幹細胞の点滴投与により、安全性及び効果を検証することを目的としています1)

  • ① 患者さんの骨髄を採取:約40 mL
  • ② 間葉系幹細胞の増殖:(株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの細胞培養加工施設で増殖
  • ③ 間葉系幹細胞を点滴投与

この再生医療により、脳梗塞の周囲の神経が保護、再生され、脳梗塞の後遺症が軽減されることが期待されるとしています。


2.第二種再生医療等・治療に関する提供計画

第二種再生医療等で治療に関しては190件が届出されていますが、脳梗塞等に関連した届出は6件です(2019年6月16日現在)。なお、以下の解説文の表現等は、再生医療等提供機関の原文を参考にしています。


2.1 自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた脳梗塞の治療

◎社会医療法人孝仁会釧路孝仁会記念病院(釧路市愛国191番212号)

同療法では、患者さんの脂肪組織の中にある脂肪由来間葉系幹細胞を用いて行なわれ、脂肪の中から幹細胞を分離して、培養し、一定の量の脂肪幹細胞を確保した後、脂肪幹細胞を静脈内に投与し、脳梗塞の治療に役立てるものです2)。治療は、血液検査→脂肪組織、血清の採取→細胞の調製→幹細胞の投与→予後検診という流れで行われます。


2.2 脳梗塞後遺症に対する自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた静脈注射

◎治療健康院クリニック(東京都中央区銀座6-7-4)

同治療では、患者さんの皮下脂肪から幹細胞を分離して培養することにより必要な細胞数になるまで増やします2)。皮下脂肪から投与できる状態に培養加工できるまで約1か月の時間を要します。培養した自己脂肪由来間葉系幹細胞を体重に応じた個数分(体重× 100-200 万個)静脈内点滴投与します。


2.3 自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた脳血管障害治療

◎医療法人社団秀博会 BTRアーツ銀座クリニック(東京都港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館201)

同治療では、患者さんの脂肪幹細胞を用いて静脈投与することで、損傷箇所に集まり、血管を新生したり、傷ついた神経の形成を促す栄養素を分泌し、脳内の死細胞を抑制したり神経発生を活性化させることで欠損した部分の修復を担うとしています2)。また、投与された細胞自身も、神経細胞となって治療効果を発揮し、神経再生を行うことが期待されるとしています。


2.4 自家脂肪組織由来幹細胞を用いた脳梗塞後遺症の治療

◎一般財団法人グローバルヘルスケア財団クリニック チクサヒルズ(名古屋市千種区千種2-24-2 千種タワーヒルズ1F)

同療法は、脳梗塞後遺症の治療を目的として、患者さんの脂肪組織から採取した幹細胞を特殊な無菌環境の下で増やした後、静脈投与を行う治療です2)。投与した後の細胞が神経細胞に分化できる細胞も存在することが分かっており、投与した後の細胞が神経細胞等に変化することで脳梗塞領域の縮小、脳神経機能改善効果、神経細胞死の進行抑制効果などが期待できるとしています。また、脂肪組織由来幹細胞は、増殖する際に各種の神経成長因子や血管形成因子、細胞増殖因子とよばれる物質を分泌し、これらが神経細胞の増殖や脳血管形成を促進することが期待されるとしています。


2.5 自家骨髄幹細胞療法(脳卒中再生医療)

◎医療法人大雅会ふくとみクリニック(大阪市都島区東野田町2-9-23晃進ビル4階)

同クリニックでは、基礎研究により、安全性が確認された臨床応用を採用し、脳卒中の後遺症に対して再生医療という新しい観点からの骨髄幹細胞を用いた治療を行っているとしています2)。期待できる効果として①血管の再生、 ②神経の活性化及び再生、 ③血管の修復などとしています。治療は、カウンセリング・診察→血液検査→ 骨髄液の採取→骨髄幹細胞の培養→骨髄幹細胞の投与→予後検診といった流れです。


2.6 自家骨髄由来幹細胞を用いた脳血管障害の治療

◎ヴィヴィアン美容クリニック(福岡市中央区大名2-6-39 ランディックビル8F)

同治療は、骨髄由来幹細胞を静脈へと注入することによって、傷ついた血管の修復や新しい血管の形成を促進し、脳卒中をはじめとする脳血管障害の症状を改善する治療法です2)。骨髄由来幹細胞は、血管の修復や新生を促進する物質を分泌することが知られており、傷ついた血管の修復や新しい血管の新生を促すことにより、血流を回復させることにより脳血管障害の症状を改善する効果があるとしています。また、骨髄由来幹細胞には炎症を抑える効果のある物質を分泌する性質があり、炎症を抑えることにより症状の悪化を防ぐ効果が期待できるとしています。


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図1 脳梗塞などに対する再生医療等の取組


(参考資料)

  1. 厚生労働省ホームページ:届出された再生医療等提供計画の一覧、第二種再生医療等・研究に関する提供計画
  2. 厚生労働省ホームページ:届出された再生医療等提供計画の一覧、第二種再生医療等・治療に関する提供計画

(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)