再生医療相談室

No.131 再生医療トピックス

再生医療の目覚ましい進展

ー日本医師会英文誌(JMA Journal)掲載レビューの紹介ー

再生医療の進展には目を見張るものがあります

それに関するレビューが日本医師会英文誌(JMA Journal)に掲載されましたので紹介します。(→原文へリンク)は国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST))の「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)から閲覧できます)

再生医療とは身体の組織や器官の障害を”幹細胞”を用いて治療する医療です。

幹細胞には

  1. 1.iPS(細胞を培養して人工的に作られた多能性の幹細胞
  2. 2.胎生幹細胞(ES細胞;発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊より作られる幹細胞)
  3. 3.間葉系幹細胞(MSC;成体内に存在する幹細胞で、中胚葉由来の組織である骨や軟骨、血管、心筋細胞、外胚葉由来の神経細胞やグリア細胞、更には内胚葉由来の肝細胞にも分化できる能力をもつ細胞)

があります。

間葉系幹細胞は体内の様々な組織から採取できます;骨髄、歯髄、脂肪組織など。

脂肪組織由来幹細胞(ADSC)の長所は

  1. 1.皮下脂肪の採取が比較的容易で安全であること
  2. 2.従ってより多くの幹細胞を培養できること
  3. 3.成長因子などの活性が高いこと

等があります。

投与方法は病巣への移植、髄液内投与、点滴投与が考えられますが、脂肪組織由来幹細胞を含む間葉系幹細胞にはホーミング作用(homing effect)を持つことが知られています。これは、間葉系幹細胞が病変部位に集まる性質で、そのため点滴投与しても障害されている組織や器官に集まりやすいため効率的に治療が進むと考えられています。

日本では再生医療等安全性確保法に従い間葉系幹細胞の治療を実施することが可能です。認定再生医療等委員会での審査で承認され厚生労働省への届け出が受理される必要があります。

注)日本ではごく一部を除いて健康保険の対象にはなっていません(自費診療になります)。

保険適応が認められているものには以下の様なものがあります。

  1. ・ジェイス(ヒト(自己)表皮由来細胞シート
  2. ・ テムセルHS注(ヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞)
  3. ・キムリア点滴静注(チサゲンレクルユーセル)
  4. ・ステミラック注(ヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞)
  5. ・コラテジェン筋注用4mg(ベペルミノゲン ペルプラスミド)

例えば、ステラミック注を作るには、患者さん自身の骨髄液と血液が必要となります。採取した骨髄液から血液(血清)を使って骨髄間葉系幹細胞を培養します。培養した骨髄幹細胞を点滴よって、患者さんの体内に戻します。事故など外傷による脊髄損傷の治療に用いられます。一回分の薬価(1回投与分の骨髄由来間葉系幹細胞の料金)は14,957,755円です(中医協 総-2 31.2.20)。製造原価が1,000万円(税込み)を超える為高額ですが、保険適応がある為高額療養費制度を受けることができます。

再生医療は、病気や怪我で失われた組織を“再生”するのですからある意味【根本的治療】です。

再生医療に用いられる細胞は”再生能力”がある細胞で幹細胞と呼ばれます。

iPS細胞、ES細胞、間葉系幹細胞の3つが代表です。

間葉系幹細胞の分化能はiPS細胞やES細胞に比べて”再生能力”は弱いのですが、遺伝子操作を加えておらず、癌化の危険性が殆ど無いことから、未分化のまま投与することが可能です。一方、iPS細胞やES細胞はその分化能が強力であるがゆえに、未分化のままヒトに投与するとその分化を制御することが難しく、奇形腫など腫瘍形成が生じてしまいます。

間葉系幹細胞のヒトへの最初の応用は1957年トーマスらによる骨髄移植で、その功績により1990年ノーベル医学生理学賞を受賞しています。

間葉系幹細胞の一つ、脂肪組織由来幹細胞は2001年Zukらによって発見されました。

間葉系幹細胞は小児期のみならず生涯存在することが分かっています。

間葉系幹細胞は分化能に加えて様々なサイトカイン、栄養因子を分泌することが知られています。証明されているものを列挙します。

  1. 1. サイトカイン;IL-6、IL-8、IL-11、IL-12、IL-14、IL-15
  2. 2. 血小板由来成長因子(PDGF)
  3. 3. 血管内皮成長因子(VEGF)
  4. 4. 肝細胞成長因子(HGF)
  5. 5. 脳由来神経成長因子(BDNF)
  6. 6. 神経成長因子(NGF)
  7. 7. インスリン様成長因子1(IGF1)
  8. 8. ストローマ細胞由来因子-1(SCF1)
  9. 9. 顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)
  10. 10. 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)

間葉系幹細胞が治療に有効であると考えられる理由としては

  1. 1. 様々な細胞に分化しうる
  2. 2. 様々なサイトカインや栄養因子を分泌する(上記)
  3. 3. 炎症を抑える
  4. 4. 神経細胞やミエリンの修復を促す
  5. 5. 血流を改善する
  6. 6. 異常タンパクを分解除去する

現時点でヒトへの臨床応用が試みられている疾患には

  1. 1. アルツハイマー病注1)
  2. 2. レビー小体病注2)
  3. 3. ALS注3)
  4. 4. パーキンソン病注4)
  5. 5. 多系統萎縮症注5)
  6. 6. 進行性核上性麻痺注6)
  7. 7. 脊髄小脳変性症注7)
  8. 8. COPD注8)

等があります

間葉系幹細胞の投与方法については主に点滴投与(血管内)と髄腔投与が行われています。

間葉系幹細胞は①腫瘍形成の危険性が殆ど無いこと、②ホーミング作用がある為、未分化の状態で全身投与が可能です。脊髄損傷のネズミに血管内投与した結果、4週間後に30%の細胞が障害部位に集まっていました。この時、脳には8%、腎臓には12%、肝臓に7%、肺に3%集まっていたと報告されています。


(用語解説)


(neuron / 20230303)