ネット上に報道された再生医療関連情報を拾い出し,原文から抜き出したものをコンパクトに記載。黒文字をクリックすると元情報へ。そして,一口コメントも!
2023.03.09 (new) "ミューズ細胞の開発中止(三菱ケミカルグループ)"(日経新聞2023年2月14日16:25より) 【三菱ケミカルグループは2月14日、再生医療に使う「Muse(ミューズ)細胞」の開発を中止すると発表しました。最新の臨床開発状況から、事業化し収益に貢献するまでに時間がかかると判断しました。ミューズ細胞は再生医療に使う技術で、これまで急性心筋梗塞や脳梗塞など7つの疾患の治療に役立つとみて、臨床試験(治験)を進めてきました。ミューズ細胞は体のさまざまな臓器にあり、健康な人から採取した間葉系幹細胞から取り出して培養し、患者に点滴で投与すると、脳梗塞などで損傷した部位に集まり、必要とされる細胞に育って患部の修復に役立つとされています。】>(開発研究が中止されたことで再生医療の実用化が遅れる懸念が生じました。ミューズ細胞は2010年に東北大学の出沢真理教授が報告した細胞です。2001年にZukらが発見した脂肪組織由来幹細胞(Zuk PA, Zhu M, Mizuno H, et al. Multilineage cells from human adipose tissue: implications for cell-based therapies. Tissue Eng. 2001;7(2):211-28.)も様々な細胞への分化能を持ち損傷部位に集まって修復を促進することが知られています。再生医療の進展に期待したいものです)
2022.06.12 "新しい生分解性ゲル+細胞は「心臓発作による損傷を修復する」可能性がある" マンチェスター大学の研究者たちは、心臓の自己修復を助ける解決策として鼓動する心臓に直接注入することができるゲルを開発しました。ゲルとともに注入した細胞が新しい組織を育てます。ゲルはその細胞が組織を再生するための足場として効果的に機能しました。これまで、心不全のリスクを減らすために心臓に細胞を注入した場合、その場所にとどまって生き延びたのはわずか1%でした。しかし、このゲルのおかげで心臓に移植された細胞は生き残ることができるようになり、所定の位置に定着しました。英国心臓財団(BHF)の支援を受け、この研究を主導したKatharine Kingは、「このゲルは、損傷した心臓の再生を助ける、将来の細胞ベースの治療法の有効な選択肢になり、心臓発作後の機能不全の心臓を修復するのに役立つ可能性は非常に大きい」と述べています。この新しいゲルは、ペプチドから作られており、ストレスを受けると液体のようにふるまい、細胞と混合して心臓に注入され、その後ペプチドが再集合して固体となり,注入細胞の足場として機能するようです。全世界で死因第1位、日本での死因第2位の心疾患の有益な治療法となることが期待されます。(TIMES Series:"New biodegradable gel could ‘repair damage caused by heart attack", 8th June 2022、The Guardian:Andrew Gregory, "Gel that repairs heart attack damage could improve health of millions", 8 Jun 2022)
2022.03.11 "腎臓由来の細胞外マトリックスを利用してブタの体内で部分切除した腎臓の再生に成功" 慶應大学医学部外科学教室と国立研究開発法人産業技術総合研究所のグループは、部分切除したブタの腎臓切断部に別のブタ腎臓から「脱細胞」して作成した細胞外マトリックス(コラーゲン)を縫合し,細胞増殖の足場として腎臓を体内で再生させることに成功し、その内容をnpj Regenerative Medicineに投稿・掲載されました(npj Regenerative Medicinevolume 7, Article number: 18 (2022) )。腎臓は静脈、動脈、ネフロン、尿管から構成される複雑な臓器で一般に再生することがない臓器とされています。本研究の報告では、細胞マトリックス移植28日後には腎臓を構成するネフロン、血管、尿管などの構造まで再現され、マトリックス内にはネフロン再生を導いたSall1、Six2、WT-1などの腎前駆マーカーが発現し、内部には活発な血流がCTにより観察されました。腎臓の再生医療は,現状ではiPS細胞からネフロン前駆細胞を誘導分化させるアプローチなどが取られていますが、まだ腎臓の実用的な再生の段階には至っていません。本研究報告は従来の再生腎臓を作るというアプローチとは異なるものですが、「脱細胞」して作成した腎臓の細胞外マトリックスを細胞増殖と分化の足場にして腎臓の複雑な構造を再生することに成功した意味は大変大きいと考えられます。通常、細胞を培養して増殖させるにはコラーゲンなどを細胞の足場とする必要があり、またその増殖が停止した段階から分化が始まります。従来の再生腎臓の作成に腎臓の細胞外マトリックスなどの足場の利用などの検討も可能かもしれません。
2021.06.24(お知らせ)
2001年5月の日本再生医療学会の発足と共に、学会からは独立した組織であるNPO法人再生医療推進センターを設立し、その活動は20年間に及びました。その間、再生医療は医学的にも発展し、一般の方々にも理解が広がり、実用化の段階に達しています。NPO法人再生医療推進センターは再生医療の黎明期から現在まで一定の役割を果たしたとして発展的に解散することとなりました。事業の一環として行ってまいりました再生医療相談室と再生医療情報の提供は有志により本ホームページにて再生医療相談室として継続して参りますのでよろしくお願い申し上げます。
以下の対象疾患の分類表は厚生労働省「第二種再生医療等・治療に関する提供計画」を対象疾患別に提供医療施設を明示・分類した表にリンクします。分類名や対象疾患名をクリックすると大きな表の指定部分にジャンプします。再生医療等を受けようとする場合の参考にしてください。各施設の治療に関する詳細は表の右端の資料をクリックしてpdfファイルをダウンロードして下さい。同意説明文書をよく読み、医師からの十分な説明を受け、理解・納得した上で検討してください。
(*:対象疾患名は各施設から届け出られた疾患名を記載しております)更新日:2020年12月08日
標記報告会が報道機関等を対象に開催されましたので,以下に概要を掲載しました。
(概要)
(報道資料)NHK NEWS WEB 京都 NEWS WEB「幹細胞投与で認知症改善か」,2020.12.18
(報道資料)ABCニュース「「アルツハイマー型認知症」の治療で症状良くなった 「再生医療に使われる幹細胞が有効」と発表」,2020.12.18
認定再生医療等委員会 の承認、厚生労働省に届け出・受理を受けて行ったALS等に対する再生治療研究(自己間葉系幹細胞投与)で成果が得られたため、治療を行うことを計画し、認定再生医療等委員会 の承認を受けて厚生労働省に届けておりましたが、厚生労働省のホームページより転載(一部改変)した下表のとおり受理されました(治療を受けるにあたっては幾つかの条件と費用が必要です)。
再生医療等提供機関の名称 | 住所 | 管理者の氏名 | 再生医療等の名称 | 認定医療等委員会の名称 | 説明文書及び同意文書の様式** |
---|---|---|---|---|---|
医療法人社団恵仁会なぎ辻病院 | 京都府京都市山科区椥辻東潰5番1 | 院長桑原仁美 | アルツハイマー型認知症に対するヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた治療 | 医療法人財団康生会武田病院特定認定再生医療等委員会 | 資料1 資料2 |
医療法人社団恵仁会なぎ辻病院 | 京都府京都市山科区椥辻東潰5番1 | 院長桑原仁美 | パーキンソン病におけるヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた治療 | 医療法人財団康生会武田病院特定認定再生医療等委員会 | 資料1 資料2 |
医療法人社団恵仁会なぎ辻病院 | 京都府京都市山科区椥辻東潰5番1 | 院長桑原仁美 | 難治性神経変性疾患(筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉、脊髄小脳変性症〈SCD〉、レビー小体病〈DLB〉、進行性核上性麻痺〈PSP〉)に対するヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた治療 | 医療法人財団康生会武田病院特定認定再生医療等委員会 | 資料1 資料2 |
医療法人社団恵仁会なぎ辻病院 | 京都府京都市山科区椥辻東潰5番1 | 院長桑原仁美 | 難治性呼吸器間質性疾患(肺気腫<COPDを含む>、特発性肺線維症<IPF>、間質性肺炎)に対するヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた治療 | 医療法人財団康生会武田病院特定認定再生医療等委員会 | 資料1 資料2 |
(**:正式名称 ⇨ 再生医療等を受ける者に対する説明文書及び同意文書の様式)
参考情報:元気が出る再生医療 No.015「脂肪幹細胞によるアルツハイマー病の治療」
*: ALS; amyotrophic lateral sclerosis
プライバシーポリシー
再生医療相談室は2021年6月5日に発展的に解散したNPO法人再生医療推進センターの「再生医学、再生医療の実用化を通して社会への貢献を目指す」と言う理念を受け継いだ有志にて運営されています。
Copyright © 再生医療相談室 All rights reserved.