NPO法人再生医療推進センター

コラム 鵜の目鷹の目


No.004 「AIとディープラーニングと脳」(2)AIと脳シグナルの出発点

今回は脳の第一ランナーのお話。そう言えば、AIのスタートボタンはAIが押すのでしょうか?思えば脳の最初のボタンも良く分かりませんね!?「意思の起源は何か?」なんて哲学書かけるかも知れません。

今分かっていることは、信号を発する直前に「準備電位」が現れることです。「用意・ドン」の用意です。そしていよいよランナーがスタート。ランナーは電気信号です。AIと一緒かな。でも、この電気信号、チョット変わっていて、“幅跳び”をしながら進みます(跳躍伝導)。実はこれを支えているのが、(1)で紹介したグリアの一つである「稀突起グリア」です。希というのは、これが発見された時殆ど突起が見えなかったからです。ところが顕微鏡が発達して実は風呂敷の様な広い突起をもっていることが分かりました。この“風呂敷(髄鞘と呼びます)”がランナーの通路(軸索)を取り囲んで守っていたのです。

さて、ここから病気のお話。第一ランナー(上位ニューロン)は脳の比較的浅いところ(大脳皮質)にいます。そこが壊されると信号が出なくなり、つまり麻痺になります。大脳皮質の脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、外傷などがそれです。軸索が壊されても信号が伝わらなくなります。筋肉を動かす神経系は途中で左右「交差」するとお話しましたが、その交差点が「錐体」にあることからこの通路を「錘体路」と呼びます。大脳の「内包」(特にその後部)で通路が密集しています。ここが障害されますと半身の麻痺が出やすいのはその為です。逆に通路が障害されていなければ麻痺はでません。同じ病気でも「場所」によって症状が違うの納得できますね。錐体より脳側の障害では反対側の麻痺、錐体より体側の障害では同側の麻痺になることも分かります。錐体より体側の病気で多いのは脊椎の病気です。下位ニューロンが居るのは脊椎の中の脊髄でしたね。そこまで上位ニューロンは手(軸索)を伸ばしています。髄鞘が壊れると“幅跳び”ができなくなります。脱髄疾患と呼ばれ、多発性硬化症などがそれに属します。

AIの「回路」とは随分違います。何故脳がこの様な仕組みを選んだのかは“神秘”というしかありません。AIで補修できるでしょうか? やはり、生命のことは生命で;再生医療への期待が高まります。

次回の「AIとディープラーニングと脳」では、脳の第二ランナーのお話。第二ランナーは「再生」します。乞うご期待!

(Neuron)


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