NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.14


専門分野: 幹細胞など基礎

Q: 息子2歳5ヶ月の右手3本切断

 ォます。すこしでもお役に立つことができるよう、努力させて頂きたいと思います。

掲載日: 2005.6.14

A:

 本例の場合は、第一関節付近での切断のようですので、将来、骨延長器を使用して、少し指を長くすることが可能と考えられます。指の機能は、骨延長術で改善する可能性があるように思います。一方、爪がないこと、関節がないことに起因する外見の改善は得られません。
現在、手指の欠損に対する治療では、一般的に足指の移植が行なわれます。この手術では、口径の小さい血管を顕微鏡下に縫合する技術が必要となり、血管縫合部が治癒する術後1週間は安静が必要です。特に、血管口径が小さく、術後安静が困難な小児では、通常、この手術が選択されることは稀です。また、足指を犠牲にして良いかどうか、の判断は、親ではなく、本人が決めるべきと考える医者も世界に数多く、その理由からも、この手術は積極的に行なわれていない現況です。万一、この手術が選択される場合は、3歳以降が好ましいとされています。本例の場合は、3本の足指を移植する必要があり、足に犠牲を十分に考慮する必要があると思います。
次に、御両親の指の移植や他人からの指の移植は、免疫拒絶の問題が解決されていない現在、治療の選択とはなりえません。免疫抑制剤による副作用は極めて大きく、肺炎などの重症感染症や肉腫(がん)が極めて高い頻度で生ずるため、移植手術の適応にはとても慎重でなくてはなりません。これまで、両手の手関節の切断例に対して、他人からの前腕を移植した症例が数例ですが、諸外国で報告されています。日本は移植技術の高い国ですが、強い副作用を懸念する理由から、移植の施行例はありません。
最後に再生医学の現状について御説明いたします。指の再生技術は、残念ながら、未だに基礎研究段階です。しかし、私どもの研究室では、世界にさきがけて、すでに小動物レベルにおいて、非常によい結果を得ています。現在は、大動物レベルでの基礎研究を行ない、臨床応用を可能とする基礎データの蓄積をしております。今後の研究成果にもよりますが、早ければ、ここ数年の間に臨床試験を開始できるように努力、準備をしております。もし、今後、再生による指再建をお考えでしたら、現在の指の状況を十分に把握するため、写真をお送りいただきたく存じます。お送りいただいた写真は、頂いたお手紙と一緒にこちらに保管させていただき、今後、再生医学という先端医療の治療効果が十分に期待できる時期が参りましたら、再度、お手紙を書かせていただきます。すこしでもお役に立つことができるよう、努力させて頂きたいと思います。
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