NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.71


専門分野: 脳・神経・脊髄

Q: ヒト胚性幹細胞

 ヒト胚性幹細胞から血液細胞、神経細胞、肝臓細胞は誘導でき、しかも自分の細胞から誘導するので拒絶反応が生じないと言うことから、とても関心があります。そこで質問ですが、交通事故などで脊髄を損傷されてしまった方の細胞を用いて、クローン技術によりその方の脊髄を再生する事は可能ですか?又、同様に自分の細胞を用いて胚性幹細胞から造血幹細胞は再生可能なのでしょうか?可能性があるようでしたら、それらのメカニズムを教えて下さい。 生命倫理的な事から、再生医療の過程が批判されることは必ずあると思いますが、私の質問内容の事が可能でしたら、事故で全身麻痺や半身麻痺となってしまった方の麻痺に対する治療が可能となり、白血病の方が自分に適合するドナーを探し骨髄移植することに代わり、クローン技術を用いた自家移植のような事も可能ではないか、と思い質問させていただきました。よろしくお願いします。

掲載日: 2005.6.13

A:

 脊髄損傷に対する再生医療としての細胞源を、患者ご本人の細胞に求めることは、ひとつ下のご質問に対する回答でもお話いたしましたように、100%目的の細胞に分化誘導することは不可能で、安全面で問題があります。ただし、現時点での話であって、今後技術が進歩すれば、可能になってくるでしょう。
胚性幹細胞から造血幹細胞への再生ですが、ご指摘のように胚性幹細胞から血液細胞、神経細胞、肝細胞などいろいろな細胞に分化誘導ができます。2002年に「Cell」という医学英文雑誌に、マウスの胚性幹細胞から造血幹細胞へ分化誘導できたとの報告が出ています。胚性幹細胞は遺伝子改変が比較的簡単な細胞で、分化誘導させる過程において遺伝子を発現させて細胞の機能を改変させることが可能です。具体的には、形態形成に関与する遺伝子の一つであるHoxB4という遺伝子を、一過性に発現させることにより、胚性幹細胞から分化誘導された造血前駆細胞を造血幹細胞へと改変できたと書かれています。ヒトの場合はどうかといいますと、ヒト胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞に比較して、分化誘導は効率が悪く、時期も長く必要であるといわれています。当方が調べえた範囲では、ヒト胚性幹細胞から造血幹細胞に誘導できたとの報告はまだないようです。
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