専門分野: 骨・軟骨
Q: 大腿骨疾患への再生医療の適用について
37歳の知り合いの男性のことでご相談いたします。彼は小学校のころにペルテス病と診断され、治療法がないまま現在に至っています。現在は骨が何センチか短いため、軽くびっこを引いて歩いており、痛みの程度も年々徐々に強くなっているといいます。3年前に1度、痛みのために整形外科病院を受診したのですが、痛みに耐えられなくなったら、人工骨頭にする手術をするしかないと思うが、人工骨頭にしたら、また将来人工骨頭を入れ替える手術が必要になるので、できるだけ長く自分の骨を持たせるようにしたほうがいい、といわれたようです。それから3年。最近、痛みが強いので手術を考えているそうですが、歯槽骨治療に再生医療が適用されているようなので、もし、大腿骨の治療に骨の再生医療を適用している病院があれば調べてほしいと相談されました。現在、大腿骨疾患の再生医療に取り組んでいる病院が国内にあるようでしたら、教えていただけないでしょうか。また、現在はまだ取り組んでいないが、近い将来取り組もうとされている病院があるようでしたら、詳しい情報を教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
掲載日: 2005.6.13
A:
産業技術総合研究所のホームページで、ティッシュエンギニアリングセンターメディカルデバイスチームの大串始博士が「骨の再生について」以下のように説明されています。 高齢者の疾患に変形性関節症があり、人工関節置換手術がよく行われています。 しかし、用いた人工材料と患者の骨との間の固着が悪いため、結果的にその人工物を抜去せざるを得ないことがあります。このような症例には患者自身の細胞を用いてあらかじめ人工関節上に骨を形成させれば、問題点は克服できます。すなわち、患者骨髄細胞を採取して間葉系幹細胞を培養により増殖させます。次に、この幹細胞を骨形成能力のある骨芽細胞へ分化させるとともに、細胞外基質(骨基質)を人工関節上で形成させます。この分化した細胞が骨芽細胞であることの確認は骨芽細胞に存在するアルカリフォスファターゼやオステオカルシンの存在により証明され、さらに物理化学的解析(XRD、FTIR)でもこの細胞外基質は生体に存在するのに匹敵する骨基質であることが確認されています。以上の経験を踏まえ、我々は患者骨髄細胞より間葉系幹細胞を増殖する事をおこない、ついで患者に用いられる人工関節を含む種々生体材料上であらかじめこの骨(再生培養骨)を創ることを行っています。すでに約30の症例に、この培養骨を用いた手術が奈良県立医大整形外科(高倉義典教授)でおこなわれ、非常に良好な結果を得ています。 他の施設でもおこなわれていますが、当方で調べえた範囲では、奈良県立医科大学が最も多く手術がおこなわれているようです。ご質問された方の場合、大腿骨の再生ですので、この方法の適応かどうかは、何ともいえませんが、一度受診されてはいかがでしょうか。
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