専門分野: 糖尿
Q: 1型糖尿病患者です
最近、インスリンをしなくて済むという夢のような話を耳にするようになり…膵臓移植に関することをいろいろ調べていましたが、術後の免疫抑制剤が一生続くことを考えますと、インスリン接種の方が、ずっとマシと思っていました。でも、今後のことを考えますと、合併症に対する不安は常にあって、出来ればインスリン注射しなくてもいい生活を望んでいます。ふと、知人から耳にした再生治療という言葉が気になり、調べましたら貴HPに辿りつきました。再生医療というのは、自身の細胞から膵島移植できるようにし、術後はインスリンも免疫抑制剤は必要なくなり、その夢のような話が現実になりつつあると理解したのですが、大丈夫でしょうか?いきなり、厚かましい質問で失礼しました。これからも、いろいろ貴HPで勉強させて下さい。
掲載日: 2008.11.24
A:
1型糖尿病の根本的治療は、枯渇しているインスリンを分泌する細胞(ベータ細胞)を何らかの方法で補填することで、膵移植もそのひとつの方法です。膵移植には臓器そのものを移植する方法(膵臓移植)と、インスリンを分泌するベータ細胞が存在するランゲルハンス島を移植する方法(膵島移植)の2種類があります。膵島移植はわが国でも2004年11月現在10例におこなわれています。臓器移植よりも手術が簡単で今後移植数も増加することが考えられます。しかし、ドナーは脳死患者(心臓死患者でも可能といわれています)であり、免疫抑制剤は膵臓移植同様一生のみ続けなければなりません。糖尿病における再生医療の研究の中心のひとつに、このベータ細胞を体の外で培養・増殖させ、これを移植するという方法があります。自分自身の体からベータ細胞に分化する細胞(幹細胞)を取り出して、シャーレの中でベータ細胞に分化させてから移植する方法ですと、免疫抑制剤は不要です。しかし、現在は十分に血糖値を下げるまでの機能をもつ細胞は獲得できていません。一方、他の動物のベータ細胞を免疫隔離膜という拒絶反応が起こらないように工夫された膜に包み込んで、移植する方法もあります。現在広く使われているヒトインスリンができる以前は、ブタのインスリンを注射していたくらい、ヒトとブタのインスリンは似ています。ですから、ブタのベータ細胞を免疫隔離膜に包み込んでつくるバイオ人工膵(カプセル化膵島)の研究も進んでいます。2002年にメキシコでこのバイオ人工膵の臨床試験がおこなわれました。短期結果は良好で、その後の経過が注目されています。
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