専門分野: 脳・神経・脊髄
Q: 腕神経叢麻痺の治療について
腕神経叢麻痺の治療について質問させていただきます。現在、外傷による腕神経叢麻痺で上肢機能全廃の状態です。最近、web上にて、このような記述を見つけました。 「上肢の末梢神経外傷のうちでもっとも重篤なのは、バイク事故による腕神経叢損傷である。腕が後方に強力に引っ張られるために、腕神経叢を構成するC5-T1が脊髄から引き抜ける。末梢神経部位での切断は手術で縫合することが可能であるが、神経根からの引き抜き損傷は、縫合すると脊髄を傷つけて新たな麻痺を作ってしまうため、手術できない。ただし、近年、「やさしく接着する」手術に果敢に挑戦している人もおり、成功例もある。」 貴BBSにおいて過去に腕神経損傷について質問された方がおられ、引き抜かれた神経を再生することは出来ないとの回答でしたが、近年、上記の治療が行われているのだと思います。医療・研究機関、研究者、臨床医の所在、臨床例、術後の予後、国内なのか、海外なのか、など、得たい情報はたくさんあるのですが、すべが全くありません。少しでも治癒の可能性があるのならと思うのですが、情報がありましたら、どうか、お願いいたします。
掲載日: 2005.6.13
A:
腕神経叢引き抜き損傷は、脊椎から手指に伸びる神経が強力な外力により引き抜かれる疾患であります。この治療はかなり困難をきわめます。日本では筋肉移植、神経移行が治療の主流です。ご指摘の通り、最近外国で引き抜かれた神経を脊髄に直接ひっつける手術をして、神経回復をみたとういう論文が出ました。著者らによれば、10例の患者にこの手術を行い3例に有効な神経回復をみたと報告しています。しかしこの3例はすべて受傷後3週間以内になされたもので、受傷から手術まで時間のたった症例の結果は良くないようです。またこの成功例も手術をして完全に回復したのではなく、手術後筋肉の収縮と関節の可動性をみとめたという程度です。まだまだ信頼性の高い手術とは言えない状況です。
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