専門分野: 眼
Q: 緑内障の再生医療の可能性
はじめまして、さっそくですが本題に入らせて頂きます。 先日妻が眼の充血が長く引かないと言うので眼科医の診察を受けました所、視神経が50%以上壊死している。 おおよそ4〜5年経過している「緑内障」だと言われショックを受けて帰ってきました。 後日に予約を取って詳しい検査をした後薬などを決定するそうですが・・・。 治療方は無く病状の進行を遅く?するだけだと聞いて何か他の方法は無いのかと考えていたところ以前にTVで見た「再生医療」の事を思い出してPC検索し貴HPにたどり着きました。 はたして、再生医療で視神経の再生と「緑内障」の自己治癒などの可能性があるのかをお聞きしたくメールさせていただきました。お忙しい所恐れ入りますが返答いただければ幸いですよろしくお願いいたします。
掲載日: 2008.11.24
A:
目に関する再生医療の臨床応用は、角膜の再生医療が広範に行われつつあります。これは従来より治療として角膜移植が行われて来ていますので、再生医療の臨床応用に取り組みやすいという背景があるからです。緑内障のような神経の再生の研究も、かなり多くの施設で積極的に行われており、需要が少ないということでは決してありません。むしろ、目の再生に関しましては神経の再生の研究の方がメインテーマになっています。但し、神経再生の研究に関しましては、次々と新しい成果が発表されてはいますが、実際の臨床応用に至るまでにはまだ少し時間がかかると考えられています。 緑内障は、高眼圧、眼血流障害などにより網膜神経が障害されて発症すると考えられています。その治療法として現在一般に試行されているのは、眼圧のコントロールです。現在、眼血流量を増加させる治療方の開発研究が行われつつあります。さらに、将来的には網膜視神経の再生医療の臨床応用が実現しますと、緑内障や、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、網膜剥離などで苦しんでおられる多くの患者さんへの福音になります。最近の研究で、眼組織には網膜の前駆細胞(幹細胞)が存在することが明らかにされました。幹細胞とは、私たちが備えている細胞(生体の細胞)になる(に分化する)前のおおもとの細胞のことです。網膜幹細胞を用いて再生医療を行う、すなわち、網膜幹細胞を、角膜移植が行われているような方法により眼に移植して、網膜視神経細胞を再生させる治療法を開発しようというわけです。幹細胞としては、他に、ES細胞(胚性幹細胞;受精卵の中に存在する)や、骨髄液のなかにある骨髄幹細胞などを用いた研究も行われています。すなわち、ES細胞や骨髄幹細胞から網膜視神経細胞を作り出そうとする研究です。 現在、世界中の研究者がこれらの重要課題に取り組んでいます。臨床応用が実現するまでにはまだ少し時間がかかるかもしれませんが、再生医療の研究分野では、ブレークスルーがなされ画期的な発見が行われた場合には、思いもよらぬ速さで臨床応用が実現する可能性もあります。再生医療の種々の分野で、私たちが以前想定していた以上の速さで臨床応用が進んでいるのも厳然たる事実です。私たちは、網膜視神経細胞に対する再生医療の分野においても、そう遠くない将来において必ずや画期的な再生医療の開発が行われるであろうことを信じていますし、一日も早い治療開発と臨床応用の実現を心待ちにしています。
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