NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.324


専門分野: 脳・神経・脊髄

Q: 骨髄幹細胞による脳梗塞の治療

 本相談のNO327(慢性期の麻痺患者への再生医療の臨床実用化研究の現状と臨床化時期の見通し)で、「将来的には慢性期の患者さんに対しても再生医療が実施されるようになると思います。急性期に対する臨床応用が始まろうとしている現状において、慢性期に対する再生医療の臨床化時期の見通しを立てることは困難ですが、おそらく、5〜10年位の間には臨床治験が開始されるのではないか」との回答でしたが、クモ膜下出血→クリッピング術後の多発性脳梗塞の夫(54歳)について質問いたします。
発病時期(8年10か月前)、現状(寝たきり、胃ろうからの食事摂取、意思疎通不能、視力不明、聴力有効)という状況ですが、このような慢性期、かつ広範囲に及ぶ後遺症に対する治療効果の有無についてお訊ねしたいと存じます。全て回復ということでなく、一部回復の可能性についてもお願いいたします。

掲載日: 2008.1.6

A:

 長期間の介護でご苦労も多いこととお見舞い申しあげます。
脳梗塞に対する再生医療としては、血管新生や神経細胞の再生が一時的に活性化しやすくなる比較的急性の時期に、患者さんに由来する骨髄細胞や培養増殖させた幹細胞を移入する臨床試験が札幌医科大学や国立循環器病センターで実施されています。しかし、ご相談のような慢性期の後遺症に対する治療法は残念ながら見つかっていません。今回、実際にこのような急性期治療を実施されている医師から情報を頂きましたので、私なりに要約してみました。
・上記のように細胞を移入するだけの治療では、慢性期の動物実験モデルではほとんど効果が無く、別の方法に取り組む必要がある。具体的には、神経細胞を栄養する微小血管や支持組織も同時に再生させなければ効果が期待できないと思われる。
・科学研究費補助金などの支援を受けて、細胞組織工学的な手法を応用した(即ち、支持組織となるような材料を組み合わせた)慢性期の神経再生医療が研究されているが、効果とともに安全性を確認する必要もあるため、臨床応用は少なくとも5年以上先のことになると思われる。
・ただ、非常に大きなbreak through(壁を打ち破るような発見)や強力な社会的要請、支援があれば、その時期が早まる可能性もあると思われる。
要約は以上です。蛇足になりますが、最後にふれられた「社会的要請、支援」は、研究者の多くが期待しているものです。再生医療の推進には、医療を必要とされる方々のご希望と研究者の熱意に加えて、より強力な社会的支援(資金も大切ですが、実施する体制や制度の整備が非常に大切です)が求められていると思います。
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