専門分野: 骨・軟骨
Q: 膝軟骨再生の現状は?
当方現在37歳です。17歳の時に右膝の関節面を骨折した経験があります。それが原因かどうか分かりませんが,32歳の時に膝に痛みを感じ,診察してもらったところ軟骨は十分あるが,膝の関節に若干の変形が見られると言われました。 そして,5年後の今,膝の痛みがひどく,軟骨もだいぶなくなっており,マイクロフラクチャーサージェンシーという手術を受けました。しかし,実際に切開してみると術前のMRI検査の知見よりも軟骨の損傷がひどく,この術式では治すことが出来ないという判断になりました。結局,医者からは軟骨の乱れた部分を切除したような説明を受けました。また同時に5年ほどたてばまた痛みが出てくるような説明も受けました。 しかし,実際は5年どころか,今現在,前よりも膝の痛みを感じることが多くなったようで不安になります。 そこで質問が二つあります。 1.この軟骨の乱れた部分を切除するというのは,必要だったのでしょうか?余計に寿命を縮めたことにならないでしょうか? 2.膝軟骨再生の技術は日進月歩のようですが,最新の情報を教えてください。(他の質問に対する答えも読んだのですが,年号が書かれていないためいつの時点の話かよく分かりませんでした。)そして,私のような一般の患者もその再生技術の恩恵をうけることは出来るのでしょうか? まだまだ自分では若いと思っています。ですから,運動が出来ない,動きが制限されるというのはかなりつらいです。かといって,安易に人工関節に置換するというのも抵抗があります。よろしくお願いします。
掲載日: 2009.8.21
A:
17歳の時に「関節面を骨折」ということですので、いわゆる頚骨高原骨折だったのではないかと思います。このような外傷のあとには、膝の経年変化(通常は中高年になって発症するいわゆる変形性膝関節症)が比較的速く進行してしまう場合が多いようです。 ご相談の件ですが、1.の「軟骨の乱れた部分を切除するというのは,必要だったか?」については、良く分かりません。一般に、外科系の医者が手術をして(私自身もその一人ですが・・・)、何かの原因で目的とする治療ができなかった(あるいは、あえて行わなかった)場合、何か他に良さそうなことがあればやってしまうという傾向があります。少しでも症状が軽減できるのではないかと期待して、乱れた部分を少しでもきれいにしておきたくなる気持ちは、理解できます。ただし、それが良かったかどうかは結果で判断するしかない、というところが手術をする医者の辛いところです。もしも手術に疑問をもっておられるのであれば、担当の医師とよくお話をされるのが良いと思います。 2.膝軟骨再生の「最新の情報」ということですが、実際の臨床で行われている治療法で画期的な新方式が出てくることはまれで、今までも行われていた方法が次第に広まって、あちこちで受けられるようになるというのが一般的です。軟骨の治療法としては、「自家骨軟骨移植」と「自家培養軟骨細胞移植」になると思います。「私のような一般の患者もその再生技術の恩恵をうけることは出来るのでしょうか?」との疑問ですが、これらの治療法は決して一部の特殊な患者さんのための医療ではありません。どなたでも、実施している施設を受診されて、適応があると判断されれば、受ける事ができます。ただ、病状によっては適応から外れる場合もありますし、費用については保険適応の有無や、施設での実施体制などで必ずしも一定ではありませんので、それぞれの施設にお問い合わせ頂く必要があります。なお、自家培養軟骨については、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングが事業化をめざしており、現在のところ、臨床試験を終わって、製造販売承認申請に向けた準備中となっています。その後に、保険適応が認められれば、全国一律に治療を受けることができるようになりますが、値段や適応条件などにどの程度の制約が付くか、注目してゆきたいと思っています。 いずれにしても、実際の病状に応じて幾つか可能性のある治療法があると思いますので、担当医師とよく相談され、必要であれば他の医療施設を紹介(医療情報を提供)していただくのが良いと思います。
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