専門分野: 脳・神経・脊髄
Q: 難しい治療とは思うのですが宜しくお願いします
自分の病気は脳炎による大脳皮質盲〔若干光覚は残っています)なのですが今度京大でiPS細胞研究所が出来たと言う事で自分の病気を治す研究もしてもらえないものでしょうか?宜しくお願いします。
掲載日: 2010.6.9
A:
本年の4月1日から、京都大学iPS細胞研究所(所長:山中伸弥、ホームページ:http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/index.html)が活動を開始しました。ここでは、iPS細胞の基礎的な研究から臨床研究まで、色々な疾患に対する幅広い研究が行われようとしています。この研究所の英語名はCenter for iPS Cell Research and Application (略称: CiRA)で、日本語に訳すと、「iPS細胞研究・応用センター」ということになり、iPS細胞の実用化に向けた強い意欲が感じられます。 iPS細胞で大脳皮質盲を治すとすると、大脳皮質の再生医療ということになります。この分野では、成人の大脳皮質でも細胞の再生が起こっていることが見いだされているほか、ES細胞やiPS細胞を使って(そもそもiPS細胞は成人の体の細胞からES細胞に類似の細胞を作製したものですから、少なくとも原理的には、ES細胞でできた事はiPS細胞でも可能です)、未熟ながら胎児期の大脳皮質に類似した神経組織を作り出すことにも成功しています(Eiraku M 他.Self-organized formation of polarized cortical tissues from ESCs and its active manipulation by extrinsic signals. Cell Stem Cell. 2008 Nov 6;3(5):519-32.)。 ということで、実際にヒトで大脳皮質の再生医療が実現するのが何時のことかは分かりませんが、それに向けた研究も行われています。 なお、「自分の病気を治す研究」との関連で申し上げますと、筋萎縮性側索硬化症やアルツハイマー病のように原因不明で遺伝子との関連が想定されるような疾患や明らかな遺伝性疾患の研究では、患者さんから頂いた細胞を元にiPS細胞を作製して、治療や病態解明に繋げる研究が行われていますが、脳炎のような感染症が原因の場合、患者さんの体の細胞に特別な問題があるとは考えられませんので、わざわざ患者さんから細胞を提供して頂かなくても、研究に支障はありません。
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