専門分野: 肺
Q: 間質性肺炎の治療について
お忙しい中恐れ入ります。現在、知人に、シェーグレン症候群によって間質性肺炎を引き起こした患者がおります。そして、一度失われた肺は回復せず、さらに間質性肺炎の進行を止める、または進行を遅らせることは本当に難しい病気であるとのことですが、再生医療によって、失われた肺の回復、または現存する肺の機能補完に期待は持てるのでしょうか。また、何か生存に向け期待できる研究が進んでいましたら、お教えいただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。
掲載日: 2010.8.1
A:
シェーグレン症候群で間質性肺炎を発症された方の治療についてのご相談です。 間質性肺炎は治療が難しい病気で、原因が良く分からない場合(特発性)もありますが、ウイルス感染や薬剤性のほかに、シェーグレン症候群のような自己免疫疾患で起こる場合があります。間質性肺炎では、呼吸困難などの重い症状がない場合でも炎症に引き続いて起こる線維化が徐々に進行し、肺全体が固くなって呼吸機能が障害される肺線維症という状態になります。 このような肺の病気に対する再生医療の研究は、幾つかの方向から行われています。研究内容を詳細には説明できませんが、一つの方向は肺そのものを再生しようという肺幹細胞の研究です。また、肺の線維化を抑制する研究として、HGFのような増殖因子を用いる方法も検討されています。また、肺線維症は、臓器全体が線維化して固くなるという点で、肝硬変や慢性膵炎など他の疾患との類似性も考えられますから、肝硬変に対して有効性が示されつつある骨髄細胞や間葉系幹細胞を用いた治療も模索されています。さらに、間質性肺炎の元になっている自己免疫疾患そのものを細胞を使って治してしまおう、というような研究も行われています。 このように、肺の再生医療も色々と研究されており、研究が進めば将来臨床応用される可能性があると期待されます。一方で、最近、肺の線維化を抑える新しい薬も開発され、国内で承認されました。このように、より良い治療法に向けて研究が行われておりますので、その成果に期待して頂けるのではないかと思います。
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