専門分野: 幹細胞など基礎
Q: NPO再生医療相談への質問に、高橋淳先生より返答を頂いた若p病患者と申します。
私は病歴25年の若年p病患者です。 最近特に言葉が出にくく顔の表情もなくなり,開眼失行というのも出てきて定期な、まぶたへのボトックス注が欠かせなくなり、DBSにも限界を感じておりました。 そこで、とりあえず再生医療の治療効果を知りたくて相談室に質問させていただきました。 希望を持てる高橋先生のご返答に気持ちが楽になり、やはり再生医療を受けたく思いました。 もし、ストレートな(窓口)があるのであれば教えていただきたくお願いいたします、 疾患特異的IPS細胞を活用した難病研究機関の決定されたとのことで、治験も近い内に始まるのでしょうか?
※WEB掲載に際し、一部本文を変更させていただいております。
掲載日: 2013.4.14
A:
実は、10年ほど前に日本再生医療学会が発足した当時、各種の細胞を用いた治療法がいろいろな施設で試みられるようになっていました。しかし、どのような臨床研究がどこの施設で行われているか、全て把握している人はほとんどいませんでした。そのような時期に、一般の患者さんやそのご家族に少しでも再生医療に関する情報を提供したい(これだけが目的ではありませんが・・・)と考えて始まったのが、このNPS再生医療推進センターでした。 その後、いろいろな制度が整備されて、現在では、少なくともちゃんとした臨床試験は、大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN)や日本医師会の治験促進センター、日本医薬情報センターのいずれかに登録され、公開されることになっています。 ただ、試験管内や動物実験で得られた新しい再生医療の可能性が新聞やテレビで華々しく報道されるのと比べると、そのような方法を実際の臨床試験に応用するには非常に地味な作業の積み重ねが必要で、原理的に可能性が示されたとしても、実際に応用されるには5年、10年20年と長い歳月を要するのが実情です。 ご相談の「患者本人には窓口がないのか?」という点について言えば、現状ではパーキンソン病の治療にiPS細胞を応用するような臨床研究は行われておらず、その意味では、患者さん本人に対してだけではなく、誰に対しても窓口はありません。従って、主治医が言っているように、現在の治療を続けていただくのが良いと思います。また、始まったとしても、重症度などに一定の条件が付く可能性もあり、また、その条件に合ったとしても、当初は主治医が言うように「治療効果も、副作用もまだ何もわからない再生医療」として初めてヒトに試される訳ですから、マイナス面についても十分に納得した上で研究に参加されるかどうか決断していただかなければなりません。 ES細胞やiPS細胞の研究は少しずつ臨床応用に近づいていますが、それが実現すればいろいろな病気が完全に治ってしまうというほど単純なものでではありません。研究者は患者の皆様の大きな期待に応えるべく鋭意研究を進めていますが、患者さんの「過剰な期待」は期待外れから大きな逆風になる危険性もはらんでいます。研究から臨床への着実な進歩を理解していただき、暖かく見守り、ご支援をいただければ、と思います。
|