専門分野:脳・神経・脊髄
脳性麻痺
現在3才の息子が、出産時の低酸素によって脳性麻痺です。
脳が萎縮している部分が大脳なので、体の障害は軽度ですが、知的障害が重く、てんかんがあります。
現在、世界中で脳の再生医療が研究されていると思いますが、大脳の萎縮による知的障害にも効果があるのでしょうか。
知的障害に対する治療は倫理的に許されないだろうという意見も聞いて、不安です。
今後、慢性期の脳梗塞に対する神経再生が可能になれば、息子のような場合も対象になりますか?
私のイメージでは成人する頃には、なにかしらの治療ができるような希望を持っていますが、実現可能でしょうか?
ご回答よろしくお願いいたします。
掲載日: 2015.12.13
A:
脳の再生は世界中で盛んに研究されています。
イモリのような有尾両生類では脳も再生します。この再生の仕組みも研究されるようになっています。一方、ヒトを含むほ乳類では、大人になっても脳のある部分で新しい脳細胞が作られている事が知られています。ただし、その細胞が脳のどの部分にでも移動して働くようになる、ということが起こらないため、ほ乳類の脳は再生しないと言われてきたものと思われます。
20年ほど前まではほ乳類の脳の再生など夢の様な話で、研究対象としてはマイナーなものでした。しかし、再生医療が盛んに研究されるようになった現在では、障害された脳の働きをより良い状況に近づけるような治療法が発見されるのではないかと期待されて、盛んに研究されるようになってきたのだと思います。このような研究が安全な治療法の開発に結びつけば、息子さんを含めて多くの方がより良い生活を送ることができるようになると期待されます。
確かに、脳にはその人個人の人格が宿っていますので、恣意的に作り替えるということは絶対に許されないと思いますが、機能が障害されて生活に支障を来すのであれば当然治療の対象となると思います。本当にヒトの脳を再生させる治療法が出てきたら、このような倫理的な問題も十分に議論されて、社会的なコンセンサスも形成されることでしょう。
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