項 目 | 内 容 |
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専門分野 | 脳・神経・脊髄 |
質問タイトル | サンバイオ社SB623とMuse細胞による再生医療 |
質問内容 |
いつも大変貴重な情報をご提供いただきましてありがとうございます。 |
掲載日 | 2019年03月19日 |
回 答 | Muse細胞のMuseはMultilineage-differentiating Stress Enduringの略で、その意味は、多分化能を持ちストレスに耐性の、となります。いわゆる間葉系幹細胞(MSC,SB623もこのような細胞です)の中に低い割合で含まれており、MSCを投与した場合の効果のかなりの部分はMuse細胞によるものかもしれません。ただし、Muse細胞は損傷を受けた細胞(脳梗塞であれば脳の細胞、心筋梗塞であれば心筋)に分化するとされていますが、一方、SB623は既存の神経の再生を促して機能を回復するとされていますので、この点は大きく異なります。投与方法もSB623が定位脳手術という形で局所に注入するのに対して、Museの方は静脈内に投与するので、後者の方が楽そうです。 SB623では慢性期脳梗塞や脳外傷後の麻痺を軽減することを期待した臨床試験が行われていますが、先日、脳梗塞の試験で有意な差が得られなかったことがサンバイオ社から発表されました。個人的には、投与方法や統計解析の方法などで改善の余地があるかもしれないと思っています。 一方、Museの方は、急性期心筋梗塞や慢性期の脳梗塞による運動障害、表皮水疱症を対象にした臨床研究が行われていますが、安全性と有効性が確立してくれば、対象疾患はさらに拡大するものと思われます。 さて、一般向けに治療が開始される時期についてですが、Museの方は、2020年にも臨床試験を終了したいとの会社の意向があるようですので、数年のうちには一般的に使えるようになるかもしれません。SB623は、安全性という意味ではかなり確立されているように思いますので、有効性が確立してくればこちらも数年のうちに使えるようになるのではないかと思います。 効果の違いについては、前述のように、想定される作用機序が異なりますので今のところ何とも言えないと思います。有効性に関する今後の発表に注目していきたいと思います。 |