項 目 | 内 容 |
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専門分野 | 糖尿分野 |
質問タイトル | 2才の息子が3か月前に1型糖尿病に |
質問内容 |
2才の息子が3か月前に1型糖尿病と診断されました。 すごく辛い現実ですが、一日も早く子供の病気を治してほしいです。 再生医療で治療できる日がいつ来るのでしょうか?また、外国に再生医療やって国があれば受けたいと思ってます。情報があれば教えていただきたいです。 |
掲載日 | 2020年04月31日 |
回 答 |
1型糖尿病の再生医療に関するご相談です。 1型糖尿病は、自己免疫などが関与して、膵臓のランゲルハンス島(膵島)にあるインスリンを産生・分泌する細胞(β細胞)が破壊されてインスリン分泌が絶対的に不足することによって起きますので、発症直後からインスリン製剤の投与は必要になります。インスリン製剤は、通常は、注射で投与しますので、2才のお子さんに毎日、何度も、血糖測定の採血をし、注射するのは大変なご苦労かと存じます。 このような1型糖尿病のための再生医療は、世界中で色々な角度から研究されています。それを大雑把にまとめますと、1. そもそも発症のところで自己免疫などを抑えて発症させないようにする研究、2. 破壊されたβ細胞を体内で再生させる研究、3. 膵島を多能性幹細胞から作る研究、そして、現在臨床でも行われている4. 膵臓あるいは膵島を移植する研究です。このうち、1と2はまだ実用化には遠く、臨床で受けていただけるレベルには達していないと思いますが、3はかなり研究が進んでいて、初歩的な臨床研究が行われるようになっています。4の膵臓・膵島の移植ですが、死んだ人の膵臓をもらって移植する臓器移植は我が国で年間40例ぐらいの人が受けおり、これは保険が適応されます。また、そのような膵臓から膵島だけを分離して移植する膵島移植は、我が国では再生医療安全性確保法の枠内で行われており、こちらも保険が適用される方向で体制の整備が進んでいます。ただ、これらの移植医療では免疫抑制が必須なのと、臓器を提供してくれる人(ドナー)が少ない関係で、希望しても全員がすぐに受けられる訳ではなく、低血糖発作で血糖管理が難しいことなど、適応がかなり制限されています(詳しくは日本膵・膵島移植研究会のHPなどをご参照ください)。そういう現実の中で、膵臓移植の待機患者(本年2月末現在で203人)の中に20才未満の患者さんはおられず、30才台から50才台が大半を占めています。 そんな中で、昔から異種(具体的にはブタ)の膵島を移植する研究が行われており、韓国では、免疫抑制を工夫してブタ膵島を直接移植する方法で臨床研究が開始されようとしています。また、膵島をカプセル化すると免疫抑制が必要なくなり、異種移植も可能となることから、各種のカプセル化膵島を使ってニュージーランドなどで臨床試験が行われていますが、安定した効果を期待できるようになるにはもう少し時間が必要です。 ということで、1型糖尿病を治す治療法は研究されていますが、まだ実用化できるレベルには達していません。移植がうまくいけば糖尿病で無くなりますが、免疫抑制は終生必要になります。これらの問題を克服できるカプセル化膵島の技術は、もう少しで一般的な治療法として受け入れてもらえそうです。この技術が確立すれば、未分化細胞由来の膵島様組織の移植にも応用でき、1型糖尿病治療の選択肢がずいぶん広がるものと期待しています。 小児の1型糖尿病治療では親御さんのご苦労は大変と思いますが、周囲の医療関係者や経験のある方々のご助言・ご助力を得て、良い治療を続けていただきたいと存じます。移植医療で糖尿病が治った患者さんでも、最初のうちは自分で血糖を計る習慣が抜けない人もいるそうです。3度の食事と同じ感覚で、自分で血糖測定やインスリン注射ができる様になるまでは大変と思いますが、4〜5才で血糖測定が、5〜6才でインスリンの自己注射が可能になるとも言われています。これらに使用する機材も日々進歩していますので、お子様にとって最も良い治療を続けていただきます様、お願い申し上げます。 |