項 目 | 内 容 |
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専門分野 | 脳・神経・脊髄 |
質問タイトル | 高次脳機能障害の治療方法 |
質問内容 |
頭部外傷による記憶障害、注意障害などの高次脳機能障害で悩んでいます。 間葉系幹細胞治療つまり骨髄幹細胞を培養投与して、回復をするという自費診療が既に行われているというニュースを見ました。 そして今話題になっております「サンバイオの薬」の場合、間葉系幹細胞の性質を持った細胞製剤の様ですがこれは、従来の間葉系幹細胞治療とどのように違うのでしょうか? 間葉系幹細胞の投与ですら自費診療なので、認可されないのか心配です。 |
掲載日 | 2022年10月11日 |
回 答 |
まず、「間葉系幹細胞治療つまり骨髄幹細胞」と言うのは違います。間葉系幹細胞は毛細血管がある組織であればどこの組織でも培養すれば殖やせる組織で、pericyte(周皮細胞)を培養している可能性があります。一方、骨髄幹細胞は骨髄(骨の中心部)にあって、骨髄にある代表的な幹細胞は造血幹細胞(すべての血球を作ることができる幹細胞)です。但し、骨髄を一般的な方法で培養すると間葉系幹細胞が生えてきて殖やすことが可能ですから、骨髄由来の間葉系幹細胞もあり得るということになります。最近では、間葉系幹細胞は、骨髄以外でも、脂肪組織や歯髄組織あるいは臍帯とか羊膜といった胎児付属物からも取れます。但し、pericyteの状態は部位によって異なるので、それぞれの組織由来の間葉系幹細胞が全く同じ細胞を殖やしているどうかには疑問があります(というか、別のものだと思っておいた方が良いです)。 そこで、「サンバイオの薬」の件ですが(他にも薬の元をいくつか持っている様ですが、ここではS B623について論じます)、この薬も間葉系幹細胞に一過性の遺伝子導入をしたもので、間葉系幹細胞である性質は変わりません。おそらく「一過性の遺伝子導入」はたくさんの細胞を得られるようにしたものかと思われますが、この部分は会社は何のためか発表していないと思います。そのような細胞を殖やしてヒトに投与して、外傷性脳障害による麻痺を治そうとする薬です。従って、もしも9月に薬価が決まっても(今年3月に優先審査の対象になったので、その6ヶ月先(総審査期間の目標は6ヶ月とされている)の9月に保険に収載されて薬価が決まっても)、当面は外傷性脳損傷による麻痺の改善に適応が制限されて、高次脳損傷までは行かないと思います。ちなみに、間葉系幹細胞は他人の細胞でも拒絶反応を起こすことなく受容される性質を持っています。 ということで、高次脳機能障害に対しては、おそらく現状では、自費診療による自己由来の間葉系幹細胞の投与か、同じく自費診療になりますが、他人の間葉系幹細胞の培養上清の投与しかないと思います。但し、これらが、効果があるかどうかや、間葉系幹細胞自体を投与することとその培養上清を投与することが全く同じ効果を持つことは確認されていませんので、ご自分で効果を確認してみられる以外にないと思います。 |
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