NPO法人再生医療推進センター

第2回 元気の出る再生医療

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再生医療ABC-イモリは再生の夢を見るか?

1.世界で一番知られた再生(医療)

それでは、皆さんに質問!
“世界で一番知られた再生(医療)は何ですか?”
答えは、“映画スパイダーマン(*1)に登場するOSCORP社カーティス・コナーズ博士の右腕の再生”です。トカゲとの異種間遺伝子交配(?)と言う研究に基づいて、トカゲの再生能力をマウスや人間に移す事を試みています。でも、上手くいかなくて、身体全体をトカゲに乗っ取られ、怪物に変身してしまいます。一方、主人公自身もクモの能力を獲得してスパイダーマンになるのですよね。
(*1)「マーベル・コミック」スタン・リー原作『スパイダーマン』を実写化した映画

これは映画の世界だけど、多能性を有する細胞から色々な機能性を持つ細胞、組織、臓器にまで分化誘導して、失った身体や種々の機能をヒトで再生しようとするのが再生医療だとすると、映画スパイダーマンの内容は再生医療の最終的な目的の一つと言えるかもしれませんね。
辞書では再生をどう定義しているでしょうか?再生の生物学的な記述を見てみましょう。
スーパー大辞林(3.0)(松村明編、三省堂)からそこには、“失われた生体の一部が再び作り出されること。下等動物ほど再生能力が強い。”と説明されています。プラナリアやイモリを意識したこの説明は正しいが、現在では一部の表現を少し修正すべきではないかとも思われます。例えば、“失われた生体の一部や組織の機能を再び作り出すこと。下等動物ほど再生能力が強いと考えられてきたが、ヒトなどの高等動物でも体性幹細胞の様に限定された範囲で再生能力を有する細胞が存在し、通常は高度にコントロールされて色々な組織に潜在することが分かってきた。”
デジタル大辞泉(松村明監修、小学館)では次のように定義されています。“生体の一部分が失われた場合、その部分が再びつくりだされる現象。トカゲの尾、カニの脚などでみられる。”別のところには、“衰え、または死にかかっていたものが生き返ること。”との記述もあります。これらの再生の定義は、現在の再生医療の目指すところとほぼ同じように思います。

プラナリアは頭を切っても、残りの部分から頭が再生され、頭の部分からは他の身体の部分が再生します。脚が無くなったイモリは元通りに脚が再生されます。このような再生機能は生物が高度に進化するとともに失われていったと考えられてきました。ヒトはカーティス・コナーズ博士の様にイモリの遺伝子の力を借りないと再生できないのでしょうか?胚性幹細胞(ES細胞(embryonic stem cells)まで戻らないと可能性はないのでしょうか?iPS細胞(induced pluripotent stem cells)の様にいくつかの遺伝子を導入しないとダメなのでしょうか?
でも、ヒトでは皮膚や毛髪や爪は新しく作り替えられていますよね。年を取ったからって皮膚や爪がなくなることはない。皮膚では、表皮の一番下の層にある基底層で細胞が分裂して上方に供給され、分化を伴いながら最上層まで上がって来て垢となって落ちていきます。これは限定された一種の再生で、基底層で分裂する細胞は毛包のバルジ領域の幹細胞から供給されることが分かっています。
そして、1960年代に骨髄から造血幹細胞が発見され、1970年に骨髄由来幹細胞などの中胚葉性組織(間葉)(*2)に由来する体性幹細胞が見いだされます(間葉系幹細胞)。それ以降も脂肪組織や骨膜など次々と色々な組織から体性幹細胞が見つかり、ヒトにも多能性を有する細胞が組織の奥深くに潜在するのではないかと考えられるようになってきました。
これらの体性幹細胞には発生段階で運命づけられおり、多能性を有しておらず、分化できる細胞に制限(多分化性)があるためから由来組織から間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞、内皮前駆細胞などと呼ばれます。
多能性細胞であるES細胞や人工多能性細胞であるiPS細胞に倫理面や安全性の問題が存在することから、「まず、体性幹細胞を実用化して再生医療に道筋を付けよう」と考える研究者も多く、骨髄由来幹細胞や脂肪由来幹細胞を応用した先駆的な臨床研究が色々な施設で進められようとしています。

(NPO法人再生医療推進センター 21研究室 篠原)


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