再生医療等の安全性の確保に関する法律(平成25年法律第85号)では、「再生医療等技術とは、細胞加工物を用いるもののうち、その安全性の確保等に関する措置、その他のこの法律に定める措置を講ずることが必要なものとして政令で定めるものをいう」とあります。再生医療等技術はリスクに応じて第一種、第二種、及び第三種に分類され、それぞれに応じた手続きが定められています。
2.1 第一種再生医療等技術について
(1)胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、人工多能性幹細胞様細胞(皮膚線維芽細胞からiPS細胞を経ずに直接作製された神経細胞など)
(2)遺伝子を導入する操作を行った細胞又は当該細胞に培養、その他の加工を施したものを用いる医療技術
(3)動物の細胞に培養その他の加工を施したものを用いる医療技術
(4)投与を受ける者以外の人の細胞に培養、その他の加工を施したものを用いる医療技術
2.2 第二種再生医療等技術について
(1)ヒト体性幹細胞(人の身体の中に存在する幹細胞で、限定した分化能を保有する細胞)
(2)培養した細胞又は当該細胞に培養その他の加工を施したものを用いる医療技術のうち人の身体の構造又は機能の再建、修復または形成を目的とする医療技術
(3)相同利用でない医療技術
相同利用とは、採取した細胞が再生医療等を受ける者の再生医療等の対象となる部位の細胞と同様の機能を持つ細胞の投与をいう
2.3 第三種再生医療等技術について
第一種及び第二種再生医療等技術に該当しない医療技術
脂肪幹細胞は上記リスク分類上、自家脂肪幹細胞は第二種再生医療等技術となり、他家(同種)脂肪幹細胞は第一種再生医療等技術になります。第一種再生医療等技術では研究として唯一、「重症家族性高コレステロール血症(主としてホモ接合体)に対する同種脂肪組織由来多系統前駆細胞移植療法の安全性の検討」が行われています。
なお、臨床試験(治験)としては、新潟大学とロート製薬(株)が日本初となる、肝硬変を対象とした他家脂肪組織由来幹細胞製剤の治験を開始しています。
脂肪幹細胞を用いた研究および治療の進展はめざましく、その現状をまとめてみました。まとめに当たっては、「厚生労働省:届出された再生医療等提供計画の一覧(2019年3月12日時点)に基づいております1)
3.1第二種再生医療等技術における脂肪幹細胞を用いた研究・治療の現状
検索日時 | 研究 | 治療 |
---|---|---|
2018年8月5日 | 脂肪幹細胞 :19件 ALS/COPDなど第二種全件数:67件 | 脂肪幹細胞 :74件 脳梗塞など第二種全件数:148件 |
2019年2月26日 | 脂肪幹細胞 :16件 脳梗塞、アルツハーマー病など第二種全件数:65件 | 脂肪幹細胞 :86件 アルツハイマー病、脊髄損傷など第二種全件数:190件 |
3.2脂肪幹細胞による研究・治療の対象疾患について
研究 | 件数 | 治療 | 件数 | 治療 | 件数 |
---|---|---|---|---|---|
肝硬変 | 2 | 変形性膝関節症 | 26 | 四肢スポーツ障害 | 2 |
慢性疼痛 | 2 | 顔面・皮膚組織再生 | 24 | 重症下肢虚血 | 2 |
アトピー性皮膚炎 | 2 | 脳梗塞 | 5 | 糖尿病 | 2 |
アルツハイマー病 | 1 | 更年期障害 | 4 | アルツハイマー病 | 11 |
筋委縮性側索硬化症 | 1 | 肝硬変・肝障害 | 4 | 筋委縮性側索硬化症 | 1 |
急性脳梗塞 | 1 | 自己免疫疾患 | 3 | 脳血管障害 | 1 |
慢性閉塞性肺疾患 | 1 | アトピー性皮膚炎 | 3 | リンパ腫 | 1 |
重症下肢虚血 | 1 | 慢性疼痛 | 3 | 不定愁訴 | 1 |
急性期脳出血 | 1 | 歯科治療 | 3 | サルコペニア | 1 |
陥凹性病変 | 1 | 脊髄損傷 | 2 | 皮下組織欠損 | 1 |
乳房再建 | 1 | 慢性潰瘍病 | 2 | 毛髪の加齢性変化 | 1 |
歯周組織再生 | 1 | 動脈硬化 | 2 | バスト再生 | 1 |
研究総件数 | 16 | 治療総件数 | 86 |
(参考資料)
(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)