NPO法人再生医療推進センター

No.39 再生医療トッピクス

肝硬変などに対する再生医療等の取組(2)

厚生労働省に届出された「再生医療等提供計画一覧」から引用

「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と共に、2014年11月に施行されました。同法律により、再生医療等を提供する医療機関等は、その提供計画を認定再生医療等委員会の審査で受けた後に、厚生労働大臣に届出ることが義務化されました。


その後、再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則の一部が改正され、再生医療等提供機関が提供する再生医療等に係る、①再生医療等提供機関の名称及び住所並びに管理者の氏名、②提供する再生医療等及び再生医療等の区分、③再生医療等提供計画に記載された認定再生医療等委員会の名称、④再生医療等を受ける患者さん等に対する説明文書及び同意文書の様式などが公開され、インターネットによって確認できるようになりました。


本報では、上記の厚生労働省の「届出された再生医療等提供計画の一覧1-2)(再生医療等提供計画を国に届出した医療機関(再生医療等提供機関)の一覧)」から肝硬変などに関連する研究及び治療を選び、紹介致します。いずれも第二種再生医療等・研究および治療からの引用です。「届出された再生医療等提供計画の一覧」の但し書きには「再生医療等を受けようとする場合は、同意説明文書をよく読み、医師からの十分な説明を受け、理解・納得した上で検討してください。」と記されています。


1.第二種再生医療等・研究に関する提供計画1)

肝硬変などに関連した研究・治療で届出されている提供計画は、いずれも第二種再生医療等の範疇です。第二種再生医療等では、研究に関して、64件の届出がありますが、肝硬変などに関連した届出は3件です(2019年7月8日現在)。なお、以下の解説文の表現等は、再生医療等提供機関から届出された資料を引用しています。


1.1 自己脂肪組織由来間葉系幹細胞の肝硬変症に対する 安全性と有効性の検討

◎九州大学先端医療イノベーションセンター(福岡市東区馬出3-1-1)

脂肪組織由来間葉系幹細胞の中には、幹細胞に分化し得る幹細胞が存在することが分っており、これまでの動物実験を含む基礎実験から肝硬変動物において、脂肪組織由来の間葉系幹細胞を静脈注射すると幹細胞が肝細胞に分化し、肝機能を改善することが知られています。最近の報告では、障害部位において、この幹細胞が肝細胞に分化しなくても障害修復因子を放出することにより肝機能を改善することが知られています。脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いることにより、患者さんの肝硬変症による肝機能低下を改善し、肝硬変による症状を改善する可能性があります。同臨床研究では肝硬変症と診断を受けた患者さんに対し、今までの基礎研究や先行研究から安全と思われる数の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈点滴注射にて投与し、細胞投与による副作用がないかの安全性を検討するとともに、その治療効果があるかを明らかにすることを目的としています。対象となる患者さんは、非代償性肝硬変注1)症の患者さんで、CT検査、血液検査にて臨床的に非代償性肝硬変症と診断されており、脳死または生体肝移植などの有効な治療法がない方です。


1.2 肝硬変症に対する脂肪幹細胞移植の臨床研究

◎医療法人いたの会久留米中央病院(久留米市小森野2-3-8)

これまでの研究から、脂肪組織由来間葉系幹細胞の中に肝細胞に分化し得る幹細胞が存在することが分かっており、動物実験を含む基礎実験から肝硬変モデル動物において脂肪組織由来の間葉系幹細胞を静脈注射すると幹細胞が肝細胞に分化し、肝機能を改善することが知られています。同臨床研究では、肝硬変症と診断を受けた患者さんに対し、今までの基礎研究や先行研究から安全と思われる数の脂肪組織由来間葉系幹細胞を点滴注射にて末梢静脈から投与し、細胞末梢静脈投与による副作用がないかの安全性を検討するとともに、その治療効果があるのかを明らかにするのが研究の目的です。


1.3 肝硬変症に対する脂肪組織由来間葉系幹細胞(自己)の安全性と有効性の検討

◎医療法人貝塚病院(福岡市東区箱崎7丁目7‐27)

現在、脂肪組織由来間葉系幹細胞の中に肝細胞に分化し得る幹細胞が存在することが分かっており、動物実験を含む基礎実験から肝硬変モデル動物において脂肪組織由来の間葉系幹細胞を静脈注射すると幹細胞が肝細胞に分化し肝機能を改善することが知られています。同臨床研究の目的は、肝硬変症と診断を受けた患者さんに対し、今までの基礎研究や先行研究から安全と思われる数の脂肪組織由来間葉系幹細胞を点滴注射にて末梢静脈から投与し、細胞末梢静脈投与による副作用がないかの安全性を検討するとともにその治療効果があるのかを明らかにすることにあります。


2.第二種再生医療等・治療に関する提供計画2)

第二種再生医療等で治療に関しては190件が届出されていますが、肝硬変等に関連した届出は5件です(2019年7月8日現在)。なお、以下の解説文の表現等は、再生医療等提供機関から届出された資料を引用しています。


2.1 自己脂肪組織由来幹細胞を用いた肝硬変症の治療

◎一般財団法人グローバルヘルスケア財団 クリニック チクサヒルズ(名古屋市千種区千種2-24-2 千種タワーヒルズ1F)

同治療法は、肝硬変の治療を目的として、患者さんの脂肪組織から採取した幹細胞を特殊な無菌環境の下で増やした後、点滴にて投与を行います。脂肪組織由来幹細胞は様々な細胞に変化する能力をもっており、投与した後の細胞が肝細胞に分化できる細胞も存在することが分かっています。また脂肪組織由来幹細胞は、増殖する際に様々なサイトカインを分泌し、肝炎の進行抑制や肝機能の改善につながることが知られています。2週間に1回の投与を4回繰り返すことで、治療を行います。自分の脂肪から採取するため、拒絶反応などが起きないのが特徴です。


2.2 ヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞投与による肝障害の治療

◎医療法人聖慈会 福岡MSC医療クリニック(福岡市中央区天神2丁目4番11号 パシフィーク天神6階)

幹細胞は、自分自身のコピーを作ると同時に、必要に応じてさまざまな細胞へと変化することのできる細胞です。特に骨髄、臍帯血、脂肪組織、歯髄などの中には「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞が存在し、医療への応用で注目されています。幹細胞は、体の中で損傷した部分を補修し、新しい細胞を増やす「種」になることのできる細胞です。このような特徴を持つ幹細胞の中でも、脂肪組織の中に存在する幹細胞は組織採取が比較的容易で、含まれる幹細胞の量も多いことから、医療への応用の期待は大きいものがあります。同治療では、患者さんの腹部から脂肪組織を10g~20g採取し、脂肪組織から分離した患者さん自身の幹細胞を培養します。細胞の培養には約 3 週間かかり、一定の細胞数まで増やした後、幹細胞を点滴で体内に戻します。幹細胞は体内の損傷した部位に集まり、幹細胞自体の働きや幹細胞が放出する多種多様な成分の働きにより、傷ついた組織の修復を促します。このことにより、肝臓の障害を緩和し、QOLの改善をはかります。


2.3 ヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞投与による肝障害の治療

◎医療法人社団康梓会 Y’sサイエンスクリニック広尾(港区南麻布5-15-27 広尾リープレックスビズ6階)

幹細胞は、自分自身のコピーを作ると同時に、必要に応じてさまざまな細胞へと変化することのできる細胞です。特に骨髄、臍帯血、脂肪組織、歯髄などの中には「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞が存在し、医療への応用で注目されています。幹細胞は、体の中で損傷した部分を補修し、新しい細胞を増やす「種」になることのできる細胞です。同治療では、患者さんの腹部(腹部からが不可能な場合には臀部を検討)から脂肪組織を10g~20g 採取し、脂肪組織から分離した患者さん自身の幹細胞を培養します。細胞の培養には約 3 週間かかり、一定の細胞数まで増やした後、幹細胞を点滴で体内に戻します。幹細胞は体内の損傷した部位に集まり、幹細胞自体の働きや幹細胞が放出する多種多様な成分の働きにより、傷ついた組織の修復を促します。このことにより、肝臓の障害を緩和し、QOLの改善をはかります。


2.4 生活習慣病による肝障害に対する自己脂肪組織由来間質細胞の静脈内投与による治療

◎医療法人社団スターセルアライアンス スタークリニック(港区海岸3-26-1 バーク芝浦11F)

幹細胞は、分裂して自分と同じ細胞を作る能力と、別の種類の細胞に分化する能力を持った細胞で、脂肪幹細胞は、採取が簡易なので患者さんの体への負担も少なくて済むのが特長です。投与された脂肪幹細胞は傷ついたところに集まり、血管を新生したり、欠損した部分の修復を担います。脂肪幹細胞の投与も、病院などで一般的に行われる筋肉内注射または点滴や輸血と同じ静脈内注射の手技で行われます。また、脂肪幹細胞 は患者さん自身の脂肪組織から作られ、同じ患者さんに投与されますので、拒絶反応等の心配もありません。静脈注射により体内に入った幹細胞は、傷ついた組織の修復に加わり、組織修復を促すものと期待できます。投与数日後から、幹細胞により分泌されるサイトカインなどにより、炎症を抑える効果が出現し、これは 2〜3 週間継続すると考えられます。投与2〜3週後から、注射された幹細胞は体内組織に生着します。


2.5 ヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞投与による肝障害の治療

◎医療法人財団 健貢会 東京クリニック

幹細胞は、自分自身のコピーを作ると同時に、必要に応じてさまざまな細胞へと変化することのできる細胞です。特に骨髄、臍帯血、脂肪組織、歯髄などの中には「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞が存在し、医療への応用で注目されています。幹細胞は、体の中で損傷した部分を補修し、新しい細胞を増やす「種」になることのできる細胞です。同治療では、患者さんの腹部から脂肪組織を10g~20g 採取し、脂肪組織から分離した患者さん自身の幹細胞を培養します。細胞の培養には約 3 週間かかり、一定の細胞数まで増やした後、幹細胞を点滴で体内に戻します。幹細胞は体内の損傷した部位に集まり、幹細胞自体の働きや幹細胞が放出する多種多様な成分の働きにより、傷ついた組織の修復を促します。このことにより、肝臓の障害を緩和し、QOLの改善をはかります。


topics39

図1 肝硬変など再生医療等取組



(用語解説)


(参考資料)

  1. 厚生労働省ホームページ:届出された再生医療等提供計画の一覧、第二種再生医療等・研究に関する提供計画
  2. 厚生労働省ホームページ:届出された再生医療等提供計画の一覧、第二種再生医療等・治療に関する提供計画

(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)