当再生医療推進センターの「No.42 再生医療トッピクス 1滴の血液で13種類のがんを発見-メッセージ物質でがんに逆襲、2019年07月30日」で紹介しましたマイクロRNA注1)を用いたがん検査は、東レ(株)の研究成果でした。今回は同じAMED研究開発プロジェクト1)の研究開発メンバー機関であった(株)東芝が13種類のがんを異なる技術を用いて13種類のがんを検出できる検査キットを開発したことをお伝え致します。
なお、AMED研究開発プロジェクトとは「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」のことであり、血液中のマイクロRNAの大規模解析を行い、乳がんや大腸がんと認知症の早期発見マーカーの探索と実用化を実施し、医療の現場で使用できる次世代診断システムの技術開発を目指していました。このプロジェクトには研究開発メンバーとして、上記2機関の他に、6機関が参画しており、各機関の今後の成果が期待されます。
株)東芝は血液1滴から13種類のがんを発見できる検査キットを開発したと発表しました(2019年11月25日)2)-4)。2時間以内に99%の精度で、がんが生じているか否かを判定できるとしています。2020年からがん患者さんを対象に大規模に実証試験を開始し、2021~2022年に人間ドックの血液検査などで実用化し、費用は2万円以下を目指すとしています。
がんから生ずる血液中の「マイクロRNA」という物質を同社が感染症検査用などで販売している遺伝子検査チップをもとに、東京医科大学や国立がん研究センターの協力を得て検査キットを開発したとのことです。過去に採取されたがん患者の血液で精度を検証し、乳がん、膵臓癌、卵巣がん、前立腺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、胆道がん、膀胱がん、肺がん、脳腫瘍、肉腫の13種類のがんについて、がんが生じているかどうかを99%の精度で判定できたとのことです。がんの大きさが1cmに満たない早期のがんも発見できたとしています。医療現場ではこの血液検査を受けて、どの臓器にがんがあるかを画像診断などで確認することになります。
既に紹介しましたように東レ(株)も同じ13種類のがんを検査できる開発を発表しています。東芝は13種類のいずれかのがんにかかっていることが1度で分かり、採血から2時間以内と、東レの数分の一程度の時間で結果が出るのも特長としています。同社が開発した検査法では、子宮頸がんの原因となる「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の型をチップで電気化学的に判別する同社のシステムを応用しています。採取した血液からマイクロRNAを抽出してチップの基板上に落とし、検査装置でがん13種を網羅的に検出するとのことです。
同社によりますと、蛍光色素を測定する大型の光学装置が必要な他社の手法に対し、検査装置を小型・簡素化できることなどから、がんを2時間以内に99%の精度で検出でき、費用は2万円未満に抑えられるとのことです。さらに、がんの大きさが数mmのステージ0の超早期がんの識別も確認できているとのことです。
2020年から開始する実証試験では、がんと診断された患者などを対象により大規模に判定精度を検証し、この結果を踏まえて、人間ドックなどで自費による検査として実用化する考えです。その後は国の承認を得て、公的保険の適用を目指としています。さらに、13種類の中でどのがんにかかっているかを特定する技術の開発も進めるとしています。
なお、国立がん研究センター中央病院は現在、上記2社と同じ13種類のがんについて、血液中のマイクロRNAによるがん診断の実用化に向けた検証を臨床研究として進めています5)。
(用語解説)
(参考資料)
(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)
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