佐賀大学医学部附属再生医学研究センターの中山功一教授らのグループは独自に開発したバイオ3Dプリンタ注1)を用いて作製した「細胞製人工血管」を世界で初めてヒトへ移植する臨床研究を開始すると発表しました(2019年11月12日)1)。
同大学医学部附属病院では、(株)サイフューズ と共同で「スキャフォールドフリー注2)自家細胞製人工血管を用いたバスキュラーアクセス注3)の再建」の臨床研究に係る再生医療等提供計画を厚生労働大臣へ提出しました(2019年11月7日)。同大学医学部胸部心臓血管外科、伊藤学助教を責任医師として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、株式会社サイフューズと共同で、患者さんの細胞から構成される細胞製人工血管を作製し、バスキュラーアクセスの再建を目的とし、対象疾患を人口透析が必要である末期腎不全とした臨床研究を実施する計画です。当該臨床研究は、バイオ3Dプリンタを用いて作製した細胞製人工血管を移植する世界初の再生医療となります。
腎不全等により血液透析が必要となった場合、人工透析患者さんの96%以上がバスキュラーアクセスとして動静脈内シャント注4)が使用されています。この動静脈内シャントの作製には患者さんの血管、あるいは人工材料から作製される小口径の人工血管が使用されていますが、既存の人工血管は感染や、閉塞等の課題があるとされています。
同大学と京都府立医科大学及び(株)サイフューズは、この課題を克服するために、バイオ3Dプリンタ「Regenova®」を用いた細胞塊の積層技術により、細胞のみから構成される小口径の細胞製人工血管の開発に取り組みました。そこで得られた成果に基づき、バスキュラーアクセスの再建を目的とし、細胞のみから構成される細胞製人工血管をヒトに移植する臨床研究が実施できることに至ったそうです。
当該細胞製人工血管は、人工材料を用いることなく、患者さんの細胞のみから作製されています。従い、人工材料から作製された人工血管に比べ抗感染性や抗血栓性において有用性が期待されます。加えて、バスキュラーアクセスの開存性向上、バスキュラーアクセスで繰り返すトラブルによる患者さんの苦痛が軽減されること等が期待されています。
(用語解説) 参考資料1.より引用しています。
(参考資料)
(NPO法人再生医療推進センター 守屋好文)
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