再生医療相談室

再生医療相談室

No.755 DBS手術を受けたパーキンソン病患者も幹細胞治療うけられますか?

項 目

内 容

専門分野脳・神経・脊髄
質問タイトルDBS手術を受けたパーキンソン病患者も幹細胞治療うけられますか?
質問内容

私「68歳」は若年性パーキンソンを37歳頃発症しました。6〜7年で薬だけでは動けなくなり、45歳頃DBS手術を受け、お薬とDBSと毎日のリハビリを必死に頑張りました。30年間頑張れたのも、再生医療で根治治療をするという目標があったからだと思います。研究して下さった先生方のお陰です、有難うございました。

  

◎質問

(1)DBS手術をうけたパーキンソン患者も幹細胞治療うけられますか?

(2)症例ありますか?

掲載日2021年08月04日
回 答

ここで言うDBSは脳深部刺激療法のことで、手術的に電極を埋め込んで、後述の「オン時」の幅を広げて副作用(ジスキネジア)が出にくくする治療法のことです。

ここで問題になっている「幹細胞治療」というのは、京都大学医学部付属病院で行われている「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」で用いられるiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞のことだとして回答いたします。実際にはこのほかに間葉系幹細胞を用いた治療なども行われているようですが詳細には触れません。

京都大学医学部付属病院のこの治験のホームページを見ますと、適格基準として、はっきりしたパーキンソン病であることと、

5)オフ時のHoehn&Yahr重症度分類がstageⅢ以上である

6)オン時のHoehn&Yahr重症度分類がstageⅢ以下である

などと書いてあります。

この中で、Hoehn&Yahr(日本語ではホーン・ヤールなどと言われます)の重症度分類のstageⅢというのは「小刻みに歩く、すくみ足がみられる。方向転換のとき転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが、介助なしに過ごせる。職種によっては仕事を続けられる。」という状態で、「オン時」・「オフ時」というのは薬などが効いている状態と効いていない状態のことです。したがって、適格基準としては、はっきりとしたパーキンソン病であること、ということかと思われます(パーキンソン様の症状があっても他の疾患があるものは除外されて、L-DOPAが有効なものだけが残る)。

また、除外基準としては、

1)頭部MRI において症候性の器質的病変が認められる、などとあり、一般に病気が進行しすぎて移植した細胞の効果がはっきり分からなくなるような症例は除外されるようです。

このように、パーキンソン病に特有の神経症状はあっても他の疾患がないということが幹細胞治療の治験の条件になりますから、他の病気にかからないようにご注意ください。また、今回の医師主導治験の患者の詳細(症例数は7名だけです)は不明ですから、DBS手術の患者さんかどうかは分かりません。

また、細胞移植には定位脳手術という手法が使われますから、この点でもDBSの手術がこれを妨げるものでないことが必要です。結局のところ、再生医療の適応となるかどうかは実際の症例ごとの状況に応じて判断されることと思いますので、一般論では大丈夫でもその症例ではダメということもあるかもしれません。今回の医師主導治験で有効性と安全性が確実になって、パーキンソン病に対する再生医療が一般的になった段階で、その方法を使うかどうかは症例に応じて判断されると思います。