専門分野: 糖尿
Q: 1型糖尿病
15才で1型糖尿病を発病し、現在18才になる息子のことでお願いします。インスリン注射を一生必要とすると医師から宣言されましたが、低血糖昏睡も経験し、またいろいろ調べますと、インスリンの副作用もかなりあると思い、発病半年位で、食事と運動等で、努力し何とか注射を打たずに現在にいたります。しかし、最近はHbA1cも高くなりつつあり、少ないながらも何とか機能していた細胞も限界かもしれません。医師はともかくインスリン再開を勧めますが、残る道は再生医療と望みを託しています。全国にはもっと苦しんでいる方も多いとは思いますが、細胞移植を受けられるにはどうすれば良いのか、など見通しをお教えいただければ幸いです。
掲載日: 2006.8.30
A:
1型糖尿病に対する細胞移植については、本HPの「再生医療について」をご覧ください。膵ベータ細胞の移植についてのご質問ですが、欧米では根本的治療になりつつある脳死患者からの膵島細胞移植に関して、わが国でも膵・膵島移植研究会のグループを中心に準備を行われています。しかし、この場合も他の臓器移植と同様に免疫抑制といって免疫反応が起こらないようにする必要がありますし、ドナー不足は決定的な問題です。2002年にオーストラリアなどの研究グループが、ブタの細胞を免疫隔離膜という免疫反応を起こさせない膜に封入した後に移植する、という臨床試験をメキシコで行いました。詳細な検討はやや不明ですが、少なくとも1例の1型糖尿病の患者がインスリンを注射しなくてもよくなったようです。ブタのインスリンはヒトインスリンと構造がよく似ていて、現在使われているヒトインスリンが開発される前は、ブタインスリンが臨床に用いられていたくらいです。また、食肉であるため、ドナー不足の問題はありません。今年に入り、アメリカをはじめ、他の国でも臨床試験が予定されています。その結果を待ちたいと思いますが、細胞の安全性の問題や機能の安定性、倫理的な問題などがあり、わが国で今すぐ臨床試験を行うという予定は残念ながらありません。一方、自分自身の細胞から膵ベータ細胞をつくる研究も盛んに行われています。まだ研究段階で、今すぐ臨床応用というわけにはいきませんが、神経細胞の欄でも述べましたが、再生医療は日進月歩ですから、研究成果に期待しつつ、インスリン再開をされてはいかがでしょうか。
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