専門分野: 心臓・血管
Q: 心筋の再生医療について
心筋梗塞後の再生医療は臨床でどの位まで進んでいますでしょうか?(成功例等)またその際に用いられる細胞は何細胞が主流でしょうか?興味本位の質問で申し訳ございませんが何卒ご教授ください。
掲載日: 2006.8.30
A:
まず,心臓の血管再生と心筋再生と意味が違うことを御認識ください.心筋梗塞は心臓を養う動脈(冠動脈といいます)が詰まってしまい、その部分から下流領域の心筋が虚血に陥ってしまう病気です。心臓の血管再生というのは詰まってしまった冠動脈のまわりに血管を新しい血管を再生させる、すなわち側副血行路の発達を促し、虚血に陥った心筋の血流を確保し、心筋障害や心筋壊死を軽減させることです。一方、心筋の再生は主として心筋に直接注射をして、心筋そのものを再生するもので、心筋梗塞だけではなく、心筋症なども対象になります。 心臓の血管新生に用いられている細胞のひとつとして、血管内皮細胞(血管の壁を構成している細胞)の前駆細胞があります。この細胞は血管内皮細胞に最終分化する前の細胞で、唯一の造血器官である骨髄に由来する細胞です。この細胞は末梢血からも分離可能と考えられています。骨髄細胞にはいろいろな細胞が含まれていますが、その中の骨髄単核細胞も主流の細胞です。実際に下肢の虚血性疾患に利用されています。冠動脈もしかりです。 一方、心筋の再生に関しても、骨髄細胞が主流ですが、最近大腿筋などの骨格筋から組織を一部採取し、そこから得られた筋芽細胞に工夫を加え、直接心不全に陥った心臓に新たな心筋を再生するという研究もおこなわれています。 また、細胞を使わない再生もあります。血管新生促進因子、血管成長因子の遺伝子や遺伝子組み換え蛋白などです。 臨床応用ですが、心筋の再生はわが国ではまだ臨床応用されていません。 冠動脈の再生は、虚血性心疾患の慢性期に対する骨髄単核細胞治療は、関西医科大学第2内科、日本医科大学第1内科、金沢大学心臓血管外科でおこなわれていますが、多い施設でも10例以下で、どこでもおこなっている治療法とはお考えにならないでください。急性期に対する骨髄単核細胞治療は、京都府立医科大循環器病学でおこなわれています。
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