NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.204


専門分野: 幹細胞など基礎

Q: 成体幹細胞と胚性幹細胞

 再生医療は、成体幹細胞を用いるものと胚性肝細胞を用いるものとの大きく二種類に分けられていると思います。
この二つには、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
私見ですが、成体幹細胞を用いた再生医療の方が倫理的な問題も小さく、またある程度分化している細胞を用いるため分化誘導の技術開発なども、ES細胞を用いる場合よりは簡便に行われるのではないかと考えています。
それでも、倫理的問題点も多く開発も困難であろうと思われるES細胞の再生医療を目的とした研究が活発に行われているのはなぜでしょうか?

掲載日: 2008.11.16

A:

 細胞を使う再生医療の細胞源としては、体性幹細胞(あるいは組織性幹細胞とも呼ばれます)と胚性幹細胞が重要ですが、おっしゃるようにそれぞれメリットデメリットがあります。体性幹細胞は胚性幹細胞のように生命の源である胚盤胞を破壊するという倫理的な問題点がなく、また奇形腫の発生もありませんが、十分な機能を発揮するに見合うだけの量を一度に採取することは困難です。また、必ずしも胚性幹細胞に比較して分化誘導が簡便というわけではありません。胚性幹細胞は一度に多量採取することが可能で、実際の臨床応用に関する研究を支えている、発生・分化の基礎的な研究には欠かせない細胞なのです。
最近、臨床研究、基礎研究に盛んに用いられている幹細胞に骨髄幹細胞があります。骨髄幹細胞は当初血液系の細胞にしか分化しないと考えられていましたが、血液系の細胞以外のいろいろな細胞に分化していくことがわかりました。骨髄幹細胞は自分自身の体から一度に大量採取することが可能で、奇形腫の発生もなく、倫理的な問題もありません。また、自分自身の骨髄幹細胞を用いる限り、拒絶反応の心配も要りません。実際に下肢の閉塞性動脈硬化症に対して、盛んに臨床応用がおこなわれています。
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