NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.240


専門分野: 心臓・血管

Q: 下肢静脈瘤の手術について

 下肢静脈瘤の手術により減少した毛細血管を再生医療によって血管の量が増やせますか?

掲載日: 2008.11.24

A:

 質問項目への回答としましては、「再生医療によって毛細血管を再生し、血管の量を増やすことは可能です。」とは申しましても、一般に行われています下肢静脈瘤手術の術後の場合は、再生医療の適応にはなっておりません。ご質問の内容だけでは、患者さまのお悩みの程度は想像出来ませんが、再生医療の対象となられる患者さんはすべて重症の下肢虚血性疾患に悩んでおられる患者さんです。実際に、下肢における潰瘍の形成、ひどい痛み、あるいは、間歇性破行のために歩行が困難な患者さんばかりであり、他には有効な治療法が無く、再生医療を行うことにより初めて治療効果、病状の改善やQOLの向上が期待できる患者さんが対象になります。
(質問者への専門家からのアドバイス)
下肢静脈瘤に対しては、内科的な治療が奏効しない場合には、根本的治療として外科的治療(手術)が行われます。下肢静脈瘤に対する手術法も非常に進歩しています。術後の今後の経過(長期的な経過も含めて)につきましては、担当の主治医の先生からお話をよく聞いておられることと存じますし、何でもご遠慮なくご相談されればと存じます。将来的に再生医療が幅広く普及した暁には、下肢の疾患に対する種々の術後に惹起されうる血流障害・循環不全に対しても、再生医療が適応となり、再生医療の臨床応用が行われるようになる可能性もあろうかと存じます。
(下肢の毛細血管および血管の再生医療情報)
念のため以下に、下肢の毛細血管や血管に対する再生医療として実施されている方法をお答えします。再生医療の方法のとしましては、(1)遺伝子治療、(2)成長因子などの蛋白を用いる方法、および、(3)細胞を用いる方法などがあります。
(1)遺伝子治療としては、下肢閉塞性動脈硬化症に対してVEGF165プラスミドを用いる治療や、閉塞性抹消動脈疾患に対してHGFを組み込んだプラスミドを用いる臨床応用が行われています。
(2)蛋白を用いる方法としては、bFGF含有ゼラチンハイドロゲルを用いる治療法が、重症下肢虚血疾患を対象として臨床試験が始められています。なお、VEGFや、HGF、及び、bFGFは、すべて血管新生作用を保持する成長因子(蛋白)の一種です。
(3)細胞療法としては、血管内皮前駆細胞や、骨髄細胞を移植する方法が行われています。
(3-1)血管内皮前駆細胞を用いる治療では、自家抹消血管内皮前駆細胞(患者さん御本人の抹消の血液から血管内皮前駆細胞を取り出して治療に用いるので、拒絶反応が起こりません)が用いられています。実際の方法を説明しますと、慢性重症下肢虚血性疾患の患者さんの下肢筋肉内の虚血部位に、血管内皮前駆細胞を注入(注射)して毛細血管の新生を促すことにより、血流の改善がもたらされます。
(3-2)骨髄細胞を用いる治療法として、患者さん御本人の骨髄液から採取した骨髄細胞(骨髄単求核細胞)を、重症虚血下肢の患者さんの下肢筋肉内の虚血部位に注入(注射)して、血管新生を促す治療が行われており、この場合にも拒絶反応の心配は全くありません。この骨髄細胞を用いる治療法はわが国で幅広く行われており、2003年6月25日に再生医療として初めて高度先進医療に認可され、保険給付が承認されました。
以上が、下肢の毛細血管や血管に対して行われている再生医療の現状です。
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