NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.261


専門分野: 眼

Q: 緑内障について

 眼に関する再生医療は角膜の再生が中心だそうですが、どうして緑内障のような神経の再生の研究はあまりなされないのでしょう?やはり需要が少ないからでしょうか?また、脳や脊髄の再生の研究が進めば視神経の再生も可能になるものなのでしょうか?僕は高校3年生なのですが、そのうち眼がみえなくなるのかなぁと考えると、将来に希望がわかず、大学に行っても目が見えなくなったら意味がないんじゃないかと考えてしまいます。

掲載日: 2008.11.24

A:

 目に関する再生医療の臨床応用は、角膜の再生医療が広範に行われつつあります。これは従来より治療として角膜移植が行われて来ていますので、再生医療の臨床応用に取り組みやすいという背景があるからです。緑内障のような神経の再生の研究も、かなり多くの施設で積極的に行われており、需要が少ないということでは決してありません。むしろ、目の再生に関しましては神経の再生の研究の方がメインテーマになっています。但し、神経再生の研究に関しましては、次々と新しい成果が発表されてはいますが、実際の臨床応用に至るまでにはまだ少し時間がかかると考えられています。
緑内障は、高眼圧、眼血流障害などにより網膜神経が障害されて発症すると考えられています。その治療法として現在一般に試行されているのは、眼圧のコントロールです。現在、眼血流量を増加させる治療方の開発研究が行われつつあります。さらに、将来的には網膜視神経の再生医療の臨床応用が実現しますと、緑内障や、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、網膜剥離などで苦しんでおられる多くの患者さんへの福音になります。最近の研究で、眼組織には網膜の前駆細胞(幹細胞)が存在することが明らかにされました。幹細胞とは、私たちが備えている細胞(生体の細胞)になる(に分化する)前のおおもとの細胞のことです。網膜幹細胞を用いて再生医療を行う、すなわち、網膜幹細胞を、角膜移植が行われているような方法により眼に移植して、網膜視神経細胞を再生させる治療法を開発しようというわけです。幹細胞としては、他に、ES細胞(胚性幹細胞;受精卵の中に存在する)や、骨髄液のなかにある骨髄幹細胞などを用いた研究も行われています。すなわち、ES細胞や骨髄幹細胞から網膜視神経細胞を作り出そうとする研究です。
現在、世界中の研究者がこれらの重要課題に取り組んでいます。臨床応用が実現するまでにはまだ少し時間がかかるかもしれませんが、再生医療の研究分野では、ブレークスルーがなされ画期的な発見が行われた場合には、思いもよらぬ速さで臨床応用が実現する可能性もあります。再生医療の種々の分野で、私たちが以前想定していた以上の速さで臨床応用が進んでいるのも厳然たる事実です。私たちは、網膜視神経細胞に対する再生医療の分野においても、そう遠くない将来において必ずや画期的な再生医療の開発が行われるであろうことを信じていますし、一日も早い治療開発と臨床応用の実現を心待ちにしています。
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