専門分野: 心臓・血管
Q: リポ淡白リパーゼ欠損症
現在。小学4年生男子 リポ淡白リパーゼ欠損症 生後3ヶ月にて診断 血液交換等をへて現在に至ります。 千葉大学にてお世話になっております。 この症例にて 再生医療等受けたいと思っております。 よろしくおねがいします。
掲載日: 2008.8.20
A:
残念ながら、ご相談のリポ蛋白リパーゼ欠損症に対する再生医療は未だ実用化されていないと思います。 この機会に、この病気のような先天性代謝異常や、もう少し広い意味で、血友病や各種の筋ジストロフィーを含む先天的な遺伝子異常を原因とする疾患に対する再生医療について書いておきたいと思います。 遺伝子の異常によって起こる細胞の機能不全を正常な遺伝子を導入することで治療しようとする方法は一般に遺伝子治療と呼ばれますが、単純に体内に遺伝子を注入するのでは十分な効果を期待することができず、正常な遺伝子をどのようにして目的の細胞に導入するかが大きな課題になっています。このため、重篤な免疫不全(重症複合免疫不全症)を引き起すADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症という疾患の治療では、患者さんのリンパ球を一度体外に取り出し、それに正常なADA遺伝子を組み込んで体内に戻すという治療が行われました。この病気では、リンパ球の機能不全が病気の原因になっているため、体外に比較取り出しやすいリンパ球が使えた訳です。しかし、肝臓や筋肉など、他の細胞に異常が起こる多くの遺伝子異常にはこの方法は使えません。そこで、近年では、各種の遺伝子異常に対する再生医療的なアプローチとして、体外で増殖させることができる各種の幹細胞(肝幹細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞など)を用いた遺伝子治療法が試みられるようになっています。例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療するために、患者さん自身の細胞に由来する筋芽細胞を再生医療的な方法で作成し、これに原因遺伝子であるジストロフィンの正常型を導入して患者さんに戻す方法が研究されています。 このように、再生医療と遺伝子治療を組み合わせた治療法が多くの疾患で研究されています。現状では、動物実験でより有効な方法が探求されている段階ですが、効果と安全性が十分に検証されれば、将来的には臨床応用される可能性があるものと期待されます。
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