専門分野: その他
Q: 細胞外マトリックスについて
細胞外マトリックスの効果をうたった番組を見て私も驚きました。 しかし、問題はマトリックスの効果が本当なのかどうか、です。 アメリカではすでに動物に対して使われてるとか、日本の大学の再生医療を研究している方も出演されてたので、本当のことだろうとは思うのですが、期待してもいいのでしょうか?
掲載日: 2008.11.16
A:
ご覧になった番組は、朝日放送が9月7日に放送した「近未来×予測テレビ ジキル ハイド」の「指が生える魔法の粉がある!!」だと思います。 ご質問は、「効果が本当なのか」ということですので、この点についてもう一度検証してみたいと思います。回答者(私)自身はこの番組を見逃しましたので、内容を再確認するためにインターネットで番組の紹介を探しました。 さて、その次に出てきたのが本家本元の朝日放送の放送内容のページ http://asahi.co.jp/kinmirai/hoso/0907.htmlでしたので、その内容を確認しますと、 「アメリカ・オハイオ州シンシナティ在住のリー・スピーバック氏は、ラジコン飛行機のプロペラに指を巻き込まれ、人差し指の第一関節から先を失った。しかし、現在では…なんと、元通りに指が再生している!しかも、4週間、ただ粉をかけただけで再生したという。」とありました。 ことの真偽を確認するために他のページも確認すると、この話の元は、イギリスBBC放送が今年の4月末頃に放送した「The man who grew back his finger tip」(「指先を生え戻した男」という感じでしょうか)というニュースのようです。内容は、そのホームページ(http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7354458.stm)にある動画と文章で確認しましたが、こちらもオハイオ発のLee Spievakという人の話なので、間違いないと思います。 そこで両者の内容を比較しますと、微妙に話が違っていることに気づきました。そして、この微妙な違いが、実は、事の真偽を判定する上で非常に重大だと分かりました。その違いとは、朝日では「人差し指の第一関節から先」となっている失われた部分が、BBCではfinger tip(指先)だということです。動画で確認したところ、明らかに第1関節と第2関節が確認でき、第一関節のシワから指先に向いて5mm程度の組織は残存しているように見えます。従って、現実に失われたのは「第一関節から先」ではなく、「指先」と言うべきだと思います。なお、映像では指も「人差し指」ではなく中指でしたが、こちらは事(マトリックスの効果)の真偽とは直接関係ありません。 ということで、「指先から1cm程度の欠損が4週間で再生した」ということであれば、断端に残っていた組織から爪や皮膚が再生したホントの話だと言えると思います。それにしても、非常にきれいに再生して、ほとんど瘢痕(傷跡)を残さずに治っていますので、この「魔法の粉」には通常のキズが治る反応を抑える一方で、断端に残存する組織の再生を促す特殊な作用があるのかも知れません。 細胞外マトリックスは細胞や組織が再生する足場を提供するのが主な役目で、再生医療では非常に重要なものです。世界中で色々な研究が進んでいますので、今後の発展に大いに期待していただきたいと思います。 なお、回答者(私)には朝日放送ホームページの紹介文を批判する意図はありませんので、この点はご理解を頂きたいと思います。
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