専門分野: 脳・神経・脊髄
Q: 自己細胞による再生医療
はじめまして、再生医療のサイトからさがしてまいりました。 以前より再生医療には興味があり、また自分自身も医療従事者として「再生医療で@@出来たら・・・」と思うことも少なくありませんでしたが、最近我が身がラクナ梗塞から不自由な身体になり色々模索しておりました そこでお伺いしたいのですが、最近では脳細胞の再生が可能であると風の便りに聞いたのですが?ご存知でしょうか。 それとキンジストロフィーやミオパチーの治療として自己細胞よりミトコンドリアの採取〜培養〜移植によって改善は出来ないでしょうか? あと50年〜100年で難治性の疾患も克服出来ると思うのですが、上記の自己細胞の移植により多くの患者が助かると思うのですが、今後研究及び可能性はあるのでしょうか? お手数かと存じますが、簡単で結構なのでご返答お願い致します。
掲載日: 2008.11.16
A:
ラクナ梗塞で不自由をなさっておられる由、お見舞い申し上げます。 今回頂いた2つのご質問に、以下のようにお答えしたいと思います。 1.「最近では脳細胞の再生が可能であると風の便りに聞いたのですが?ご存知でしょうか。」 答えはYesです。1990年代に入ってから、ほ乳類の成体の中枢神経における神経幹細胞の存在が示され、ニューロンが新生することが分かってきました。 2.「キンジストロフィーやミオパチーの治療として自己細胞よりミトコンドリアの採取〜培養〜移植によって改善は出来ないでしょうか?」 まず、一般の方々向けに若干の解説をしますと、細胞内でエネルギーを作り出すミトコンドリアの機能異常により発症する疾患をミトコンドリア病(または〜症)と総称します。その原因は、一部の患者さんではミトコンドリアで働くタンパク質をコードする核遺伝子の変異による場合もありますが、その多くの場合は、ミトコンドリア遺伝子の変異によって発症します(ミトコンドリア自体が細菌のような環状遺伝子を持っており、細胞内で増殖します)。ここまで確認したうえで、ご質問への答えはNoだと思います。今のところ、ミトコンドリアだけを細胞外に取り出して培養・増殖させることは不可能と思われます。ただし、ミトコンドリアDNAでも遺伝子の相同組換えが起こり、遺伝子を変えることはできるのは分かっていますので、将来的に全く不可能とは言えないかもしれません。なお、現在のミトコンドリア病に対する再生医療研究では、正常なミトコンドリアを持つ細胞に患者さんの核を移植することで、患者さんのゲノム(核)遺伝子と正常なミトコンドリアを有する細胞を樹立し、これを元に、問題となる組織や臓器の細胞を分化させて移植する、というような戦略が考えられています。
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