NPO法人再生医療推進センター

再生医療相談室 回答ページ No.369


専門分野: 脳・神経・脊髄

Q: 脳幹の再生

 私は2年半前に脳幹出血で倒れた**歳の男性です。毎日、リハビリに励んでおりますが左半身麻痺の状態で一向に良くなりません。最近、ES細胞から大脳前駆細胞の分化誘導に成功という記事がありましたが、このことは脳幹にも応用できるのでしょうか。それとも脳幹はまったく別の細胞に分化させなければ使い物にならないのでしょうか。素人の浅知恵しか持ち合わせておりませんが、どなたかお答えくださいませ。お教え頂ければ幸いで。お忙しい中、失礼とは存じますが、よろしくお願い致します。

掲載日: 2009.2.13

A:

 脳幹出血後のリハビリで頑張っておられるご様子、頭が下がります。
さて、「ES細胞から大脳前駆細胞の分化誘導に成功」というのは、理研の笹井先生らのグループがES細胞から大脳皮質に類似した層構造を持つ組織を分化させるのに成功したというものかと思います。この研究は一連のES細胞から神経細胞を分化させる研究の中では大変意義深いものです。ただ、これで臨床的に大脳皮質の再生医療が可能になったかと言えば、そうではなく、まだまだ多くの研究が必要なのも事実です。この成果が「脳幹にも応用できるか」というお尋ねですが、直接にはできなくてもこのような細胞分化の研究から応用できる成果が派生してくるものと期待されます。一口に脳幹と言っても、大脳皮質のように比較的均質な構造の神経組織ではなく、多くの神経核や網様体、知覚神経や運動神経を含む非常に複雑な構造を有していますので、容易に取り扱えるものではありませんが、将来的にはそれぞれの部分に応じた再生医療が検討されてゆくものと思います。今回のご相談では、主な症状が左半身麻痺ということですから、脳幹の運動神経の障害が強いのかもしれません。脳幹の下に繋がっている脊髄の再生医療研究では、このような運動神経や知覚神経の繋がりを取り戻す研究が主に行われていますので、将来的にはそのような研究の成果も治療に繋がることが期待されます。
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