専門分野: 脳・神経・脊髄
Q: 脳性まひ児の再生医療について
今9ヶ月になる子がおります。脳室周囲白質軟化症です。 まだ首が据わらず、手も開かず、目も合わず、あやしても笑いません。 まだ診断が下ってはおりませんが、おそらく脳性まひと思われます。 アメリカで臍帯血移植による再生医療がおこなわれていると聞きました。 本当でしょうか? 日本でもおこなっている病院はありますでしょうか?
掲載日: 2009.6.9
A:
臍帯血を使った新生児の脳障害の治療について調べましたところ、米国、ノースカロライナ州のDuke大学で、治療法の安全性と妥当性を検証するフェーズ1研究が2008年から2011年までの予定で行われていました(英語ですが、これを紹介しているウエッブページは下記です)。 http://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00593242?term=00593242&rank=1 この治療法の概略は、臍帯血の提供を行った新生児が低酸素脳症となった場合、24時間以内に低体温療法を開始すると共に、自己の臍帯血から濃縮した細胞成分を、3から4回に分けて72時間後まで末梢静脈内へ投与するというものです。治療後は生後1年まで経過を観察して、臍帯血細胞投与を行わなかった従来の経過と比較することで、その安全性と妥当性を検証することになります。 この試みの基本的な考え方は、臍帯血は出生児に患児の体内に流れていた血液ですが、多くの幹細胞が含まれているため、これを出生後3日まで継続して補給すれば低酸素による脳の障害をある程度まで軽減できるのではないか、ということだと思われます。この研究で有望な結果が得られれば、このような治療法が広まると思いますが、現在のところ他の施設では行われていないようです。 我が国では、臍帯血とは直接関係ありませんが、神経幹細胞を用いた新生児脳障害の動物実験(新聞報道は文末の注に引用します)なども行われていますが、臨床応用にはまだ時間がかかると思われます。 注:http://rm-promot.com/community/modules/news/article.php?storyid=360
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