専門分野: 脳・神経・脊髄
Q: どこまで進んでいるか教えて下さい
初めまして私は11歳の時脳炎を患いその後遺症として視力障害〔大脳皮質盲、視力は0ですが光覚は若干残っています。)と末梢神経麻痺が残ってしまいました。その為に日常生活に支障をきたしているので再生医療におおいに期待しています。 現在日本の再生医療は又世界はどこまで進んでいるのでしょうか?教えて下さい。 お忙しいとは思いますがどうぞ宜しくお願いいたします。
掲載日: 2009.9.7
A:
「現在日本の再生医療は又世界はどこまで進んでいるのでしょうか?」というご質問に対する答えがどこかにあれば、私も是非とも知りたいと思いますが、全世界の再生医療の状況をくまなく把握しておられる方はいらっしゃらないと思います。ただ、これでは答えになりませんので、中枢神経(脳と脊髄)の再生医療で最近起こっているトピックスを紹介します。 まず、ES細胞の治療への応用ですが、米国でヒトES細胞の治療応用を進めているGeron社から、ヒトES細胞から分化させた神経細胞を脊髄損傷の急性期に損傷部位に投与して、その安全性と効果を研究するという治験を行うという申請に対して、FDA(米国の厚生労働省のような組織)が承認を与えました(この件を紹介するNPO日本脊髄基金のページ:http://www.jscf.org/jscf/SIRYOU/igaku-1/saiboisyoku/Geron-FDA-ES.html)。これが実施されれば、ES細胞の臨床応用としては世界初の試みとなります。 脳の再生医療は、パーキンソン病に対して胎児の特殊な脳細胞を移植するような試みが外国で行われて来ましたが、ES細胞など幹細胞の応用は未だ行われていないと思われます。その他に、脳梗塞で血流障害に陥った細胞を救う目的で、骨髄由来細胞の投与が試みられています。しかし、成人の大脳皮質の脳細胞そのものを再生させるような治療法が実現するまでには、まだ多くの研究が必要です。
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